納品は終わっているのに請求書を出し忘れていた。あるいは、出したはずの請求の入金が確認できていない。受託でこれが起きるのは注意力の問題ではなく、納品・請求・入金が別々の場所に記録されているからです。

請求管理の台帳とは、1案件(1請求)を1行にして、納品日から入金の消込までを同じ行で追えるようにした表です。結論を先に書きます。入金予定日は手で入れず、請求日と支払サイトから計算式で出してください。 手入力にした瞬間、遅延の判定が「記憶」に依存するようになり、台帳の意味が半分なくなります。

この記事では、コピーして使える11列の設計と、請求日・入金予定日を自動で出す数式、遅延を条件付き書式で拾う方法、月末の回し方までを書きます。Googleスプレッドシートでもエクセルでも同じ数式で動きます。

この記事の要点

  • 台帳は1案件1行。納品日を入れたら請求日と入金予定日が数式で埋まる形にする
  • 状態列は「未請求/請求済/入金済」の3値だけ。増やすと更新されなくなる
  • 遅延の検知は条件付き書式に任せる。目視のチェックはいずれ止まる
請求管理台帳の流れを示した図。納品日から締め日で請求日が決まり、請求日に支払サイトを足して入金予定日が出て、そこから消込と遅延の検知に分かれることが確認できる

台帳に置く11列

シート名を「請求台帳」にして、1行目を見出しにします。左から順に、案件の情報・日付・金額・状態の4ブロックで並べます。

列見出し入力例種類
A請求番号2026-031手入力(連番)
B取引先○○株式会社プルダウン
C案件名コーポサイト リニューアル手入力
D納品日2026-09-18手入力
E締め日区分月末プルダウン(月末/20日/即時)
F請求日2026-09-30数式
G支払サイト(日)60プルダウン(30/45/60)
H入金予定日2026-11-29数式
I請求金額(税込)550,000手入力
J状態請求済プルダウン(未請求/請求済/入金済)
K入金確認日手入力(消込時)

J列を3値に絞るのがポイントです。「発行待ち」「先方確認中」などを足したくなりますが、状態が増えるほど更新されなくなり、結局どれが本当か分からない台帳になります。取引先ごとの締め日と支払サイトは支払いサイトとはで整理しています。

請求日と入金予定日を数式で出す

D列(納品日)を入れたら、F列とH列が自動で埋まる形にします。

列数式意味
F(請求日・月末締め)=EOMONTH(D2,0)納品月の末日
F(20日締め)=IF(DAY(D2)<=20, DATE(YEAR(D2),MONTH(D2),20), DATE(YEAR(D2),MONTH(D2)+1,20))20日を過ぎたら翌月20日
H(入金予定日)=F2+G2請求日に支払サイトを足す
遅延日数=IF(AND(J2<>"入金済", TODAY()>H2), TODAY()-H2, "")予定日を過ぎた未入金だけ日数が出る

E列の締め日区分で式を分ける場合は、F列を =IF($E2="月末", EOMONTH($D2,0), IF($E2="20日", …)) のように1本にまとめても構いません。大事なのは、納品日を入れる以外に手を動かさなくても請求日と入金予定日が決まることです。

遅延と請求漏れを条件付き書式で拾う

目視のチェックは長続きしません。次の2つのルールを入れておきます。

  1. 請求漏れ:=AND($J2="未請求", TODAY()>$F2) で背景を黄色。請求日を過ぎたのに未請求の行が浮かびます
  2. 入金遅延:=AND($J2="請求済", TODAY()>$H2) で背景を赤。入金予定日を過ぎた行が浮かびます

どちらも「カスタム数式」として行全体(A2:K)に適用します。これで、台帳を開くだけで今やるべき行が色で分かる状態になります。請求と入金を月末にどう回すかは請求・入金管理のやり方にまとめています。

月末の回し方

台帳ができたら、月末の作業は次の3つだけになります。

  1. 黄色の行を請求する(請求日を過ぎた未請求)。請求書を送ったらJ列を「請求済」に変える
  2. 赤の行に連絡する(入金予定日を過ぎた請求済)。督促の前に、まず自分の請求書の宛先と締め日が合っていたかを確認する
  3. 入金があった行を消す。K列に入金確認日を入れ、J列を「入金済」にする

この3つを月末の30分に固定してしまうのが、いちばん現実的な運用です。取引先が増えて台帳の行が100を超えたあたりから、取引先ごとのフィルタビューを作っておくと探す手間が減ります。

入金予定日を資金繰り表につなげる

台帳のH列(入金予定日)とI列(請求金額)がそろうと、そのまま資金繰りの入金予定として使えます。月ごとに合計するだけです。

=SUMIFS($I:$I, $H:$H, ">="&月初, $H:$H, "<="&月末)

支払い側(外注費)も同じ形で月ごとに合計すれば、入金と支払を突き合わせた表になります。列の設計はスプレッドシートの資金繰り表の作り方に書いています。支払サイトが30日と60日で手元がどれだけ変わるかは支払サイトが資金繰りに与える影響で数字にしています。

この台帳で足りなくなるタイミング

1人〜数名で、請求が月に10〜20件までなら、この台帳で問題なく回ります。ちゃんと回っているうちは乗り換える必要はありません。

別の仕組みが必要になるのは、案件・発注・請求が別ファイルに分かれていて、同じ取引先名と金額を3回入力している状態になったときです。ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っている Pipelia では、案件の入金予定と発注の支払予定を同じデータから12ヶ月先まで突き合わせ、回収と支払の遅れを警告します。

Pipeliaの資金繰り画面。入金予定と支払予定が月次で12ヶ月先まで並び、回収遅延の警告が表示されている

この台帳に載せる請求書そのものを、インボイスの記載事項に沿って数式で作る方法は請求書テンプレートをスプレッドシートで作るにまとめています。

よくある質問

請求書の発行そのものはこの台帳でできますか?

この台帳は請求の「管理」だけを担当します。発行は会計ソフトや請求書サービス、あるいは見積書のテンプレートを流用する形で構いません。台帳側に請求番号を持たせておけば、発行したPDFのファイル名を請求番号にそろえるだけで、あとから探せる状態になります。

入金予定日は手で入れたほうが正確ではないですか?

個別に例外がある場合は手入力で上書きして構いませんが、既定値は数式にしてください。手入力を前提にすると、入力し忘れた行が「遅延なし」として扱われ、いちばん危険な行が色でも数字でも浮かばなくなります。例外は色を変えるなどして、上書きした行が分かるようにしておくと安全です。

消込はどのタイミングで行えばいいですか?

入金の確認が取れた時点、つまり通帳や入出金明細で着金を見たときです。請求書を送った時点や、先方から「支払いました」と連絡が来た時点で消してしまうと、実際には着金していない行が台帳から消えます。消込の基準を「着金の確認」に固定しておくと、月末に残る赤い行がそのまま督促リストになります。