月末に請求書を作るたびに、前月のファイルを開いて取引先名と日付と明細を上書きし、電卓で消費税を出し直していないでしょうか。前月の明細が1行残ったまま送ってしまう、合計だけ直して消費税が古いままになる、登録番号を入れ忘れる。請求書のミスは数百円の差でも、取引先の経理から差し戻されれば入金が1ヶ月遅れます。

請求書テンプレートとは、毎回変わる部分(取引先・日付・明細)だけを入力すれば、小計・消費税・請求金額・支払期限が数式で出るように作っておく請求書のひな形です。結論を先に書きます。Googleスプレッドシートで作るなら、自社の名称・登録番号・振込先は別シートに1回だけ書いて参照し、請求書のシートでは明細の数量と単価だけを手で入れてください。消費税は明細の行ごとではなく、小計に対して1回だけ計算します。これはインボイス制度の決まりで、行ごとに端数を切り捨てて足す作り方は認められていません。

この記事では、インボイス制度の記載事項を満たす請求書のレイアウトと、セルごとの数式、源泉徴収が必要な場合の差引振込額、PDFにして送るまでの手順を書きます。発行した請求書を一覧で追う台帳の作り方は請求管理のスプレッドシートテンプレートにまとめているので、この記事は「1枚の請求書をどう作るか」の作り方です。

この記事の要点

  • 自社の名称・登録番号・住所・振込先は「自社情報」シートに1回だけ書き、請求書のシートからは数式で参照する。毎回の上書きで登録番号が消える事故がなくなる
  • 消費税は =ROUNDDOWN(小計*0.1,0) で、小計に対して1回だけ出す。明細ごとに税を出して足す作り方はインボイス制度では認められない
  • 個人のデザイナーがデザイン料を請求するなど源泉徴収の対象になる場合は、税抜の小計から源泉徴収税額を出し、差引の振込額まで請求書に書いておく
請求書の金額が決まる順番を示した図。明細(品目・数量・単価)を入れると、小計(税抜)、小計に1回だけ切り捨てで計算する消費税、請求金額(税込)が順に決まり、デザイン料など個人の場合は源泉徴収税額を引いてお振込金額を出し、最後にPDFの写しを残して請求台帳へ1行記録する流れが確認できる

インボイス対応の請求書に必要な6つの記載事項

まず、請求書に何を書けばよいかを確かめます。適格請求書(インボイス)には、次の6つの記載が必要です(出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」、2026年10月4日確認)。

#記載事項テンプレートでの置き場所
1書類作成者の氏名または名称および登録番号自社情報シートから参照(E7〜E8)
2取引年月日請求日・明細の品目(例:2026年9月分)
3取引内容(軽減税率の対象品目である旨)明細の品目
4税率ごとに区分して合計した税込対価(または税抜対価)の額と適用税率小計(10%対象・税抜)
5税率ごとに区分した消費税額等消費税(10%)
6書類の交付を受ける事業者の氏名または名称取引先名(A7)

名称は屋号や省略した名称でも、交付する事業者を特定できれば差し支えないとされています(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問55、2026年10月4日確認)。フリーランスで屋号を使っている人は、自社情報シートの名称に屋号を書いて構いません。

受託のWeb制作・システム開発・デザインの請求は、ほとんどが10%の1つの税率で済みます。この記事のテンプレートも10%の1段で作っています。軽減税率(8%)の品目を同じ請求書に載せる場合は、4と5を税率ごとに分けて書く必要があるので、小計と消費税の行を8%用にもう1段足してください。

請求書と見積書・発注書・納品書の役割の違いは見積書・発注書・納品書・請求書の違いに書いています。

自社情報シートに1回だけ書く6項目

ファイルの1枚目を「自社情報」シートにして、A列に見出し、B列に値を入れます。請求書のたびに変わらない情報はここにしか書きません。

セル見出し入力例
B1名称(屋号)株式会社○○/○○デザイン
B2登録番号T+13桁の番号
B3住所東京都○○区…
B4連絡先電話番号・メールアドレス
B5振込先○○銀行 ○○支店 普通 1234567 カ)○○
B6担当者名請求書の問い合わせ先

前月の請求書をコピーして使い回す運用でいちばん起きるのは、登録番号や振込先を何かの拍子に消してしまい、そのまま送ることです。ここを別シートに逃がしておけば、請求書のシートで何を上書きしても自社の情報は崩れません。振込先の口座を変えたときも、B5を1か所直すだけで済みます。

登録番号は、国税庁の資料の記載例では「T」に続く13桁の数字で示されています(出典:同上Q&A 問57の記載例、2026年10月4日確認)。適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合は、B2を空のままにしておきます。

請求書シートのレイアウトとセルの数式

2枚目を「請求書」シートにして、A〜F列でA4縦1枚に収まる形を作ります。手で入れるセルと数式のセルは次のとおりです。手で入れるセルだけ背景を薄い黄色にしておくと、毎月どこを触ればいいかが一目で分かります。

セル内容入力・数式
A1表題「請求書」と入力
F2請求番号手入力(例:2026-10-001)
F3請求日手入力
F4お支払期限=IF(F3="","",EOMONTH(F3,1))
F5源泉徴収プルダウン(する/しない)
A7取引先名手入力(末尾に「御中」)
A8件名手入力(例:コーポレートサイト制作 2026年9月分)
E7自社の名称=自社情報!B1
E8登録番号=IF(自社情報!B2="","","登録番号 "&自社情報!B2)
E9〜E10住所・連絡先=自社情報!B3、=自社情報!B4
C11ご請求金額(税込)=F27
A13〜F13明細の見出し品目(A〜B列を結合)・数量・単位・単価・金額
A14〜E23明細品目・数量・単位・単価を手入力(10行)
F14〜F23金額=IF(OR(C14="",E14=""),"",C14*E14) を下へコピー

F4のお支払期限は、EOMONTH で請求日の翌月の末日を出しています。EOMONTH は、起算日から指定した月数だけ前または後ろの月の最終日を返す関数です(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「EOMONTH」、2026年10月4日確認)。取引先の支払条件が「月末締め翌々月末払い」なら、式の1を2に変えます。支払条件ごとに資金繰りへどう響くかは支払いサイトとはで書いています。

明細の単価は、見積書の積算と同じ考え方で「一式」にせず、工程や作業単位で分けておくと、取引先の経理も検収した内容と突き合わせやすくなります。見積書側の作り方はエクセルの見積書テンプレートを参考にしてください。

消費税は小計に対して1回だけ計算する

明細の下に、合計の5行を置きます。

セル見出し数式
F25小計(10%対象・税抜)=SUM(F14:F23)
F26消費税(10%)=ROUNDDOWN(F25*0.1,0)
F27請求金額(税込)=F25+F26
F28源泉徴収税額次の節の式
F29差引お振込金額=F27-F28

このテンプレートで一番大事なのがF26です。適格請求書に書く消費税額等に1円未満の端数が出る場合は、1枚の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります。切上げ・切捨て・四捨五入のどれを選ぶかは任意ですが、明細の商品ごとに消費税額を出して端数を処理し、その合計を消費税額として書くことは認められていません(出典:国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問57、2026年10月4日確認)。

そのため、明細の各行に「消費税」の列を作って足し上げる形にはしません。具体的に、明細に2,475円と1,375円の2行がある請求書で比べます。

  • 行ごとに10%を出して切り捨てると、247円+137円で消費税は384円になる。この書き方は認められない
  • 小計3,850円に10%を掛けて1回だけ切り捨てると、消費税は385円になる。F26の式はこちら

ROUNDDOWN は、数値を指定した桁数に切り捨てる関数で、桁数に0を指定すると整数に切り捨てます(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「ROUNDDOWN」、2026年10月4日確認)。端数を四捨五入にしたい場合は ROUND に置き換えますが、どちらにするかは一度決めたら毎月そろえておくと、請求台帳や会計ソフトの数字と食い違いません。

源泉徴収が必要な請求では差引の振込額まで書く

個人のデザイナーが法人にデザイン料を請求する場合のように、報酬が源泉徴収の対象になるときは、取引先が請求金額から所得税と復興特別所得税を差し引いて振り込みます。請求書の側で差引の振込額まで書いておくと、入金額が請求金額より少なくても消込で迷いません。どんな報酬が対象になるかの判断は外注費の源泉徴収をスプレッドシートで計算するにまとめています。

F28には次の式を入れます。

=IF(F5<>"する",0,IF(F25<=1000000,ROUNDDOWN(F25*0.1021,0),ROUNDDOWN((F25-1000000)*0.2042+102100,0)))

支払金額が100万円以下なら支払金額×10.21%、100万円を超えるなら(支払金額−100万円)×20.42%+102,100円で、求めた税額の1円未満は切り捨てます(出典:国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」、2026年10月4日確認)。

式で税抜の小計(F25)を使っているのは、請求書で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてよいとされているためです。この取扱いはインボイス制度の開始後も変わっていないと明記されています(出典:同上「No.2795」)。このテンプレートは小計と消費税を別の行に分けているので、この条件を満たします。

たとえば税抜180,000円のデザイン料なら、次のようになります。

  • 小計(税抜)180,000円、消費税18,000円、請求金額198,000円
  • 源泉徴収税額は 180,000×10.21%=18,378円
  • 差引お振込金額は 198,000−18,378=179,622円

同じページには、令和9年分以後は所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を源泉徴収すると書かれています(出典:同上「No.2795」、2026年10月4日確認)。2027年以降に支払われる分の請求書を作る前に、このページで税率と計算式を確かめ、F28の式の数字を合わせてください。

PDFにして送り、写しと台帳に残す

作った請求書は、PDFにして送ります。Googleスプレッドシートの印刷画面では、印刷する範囲を「選択中のセル」に絞り、用紙サイズ・ページの向き・余白を指定できます(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Google スプレッドシートから印刷する」、2026年10月4日確認)。A1:F33 を選択してから印刷画面を開き、用紙サイズをA4、向きを縦にして出力すると、毎回同じ見た目になります。

送ったあとにやることは3つです。

  1. PDFのファイル名を「請求番号_取引先名.pdf」にして、年ごとのフォルダに保存する。交付したインボイスの写しは保存しておく必要があります(出典:国税庁「インボイス制度について」、2026年10月4日確認)
  2. 請求台帳に1行足す。請求番号・取引先・案件名・請求額・請求日・入金予定日を書き、入金を確認したら消込の欄を埋める
  3. 請求書シートの明細(A14〜E23)と取引先名・件名を消して、翌月に備える。数式のセルと自社情報は触らない

請求番号は「年-月-連番」のように重複しない決まりにしておくと、台帳とPDFのファイル名と取引先からの問い合わせが同じ番号でつながります。台帳の列設計と、入金予定日を数式で出す方法は請求管理のスプレッドシートテンプレート、月末の請求の流れ全体は請求・入金管理のやり方に書いています。

この請求書テンプレートで足りなくなるタイミング

取引先が10社前後までで、請求が月に十数枚なら、このテンプレートと請求台帳の2つで十分に回ります。苦しくなるのは、請求書の金額と、その案件にかかった外注費や入金予定を、別々のファイルから毎月集め直すようになったときです。

ここからは自社製品の紹介です。Pipelia は請求書を発行するツールではありませんが、案件ごとの売上と外注費から粗利を自動で計算し、入金予定と支払予定を月次で12ヶ月先まで突き合わせて、回収や支払の遅れを警告します。

Pipeliaの資金繰り画面。入金予定と支払予定が12ヶ月先まで月別に並び、遅延の警告が確認できる

よくある質問

エクセルでも同じ請求書テンプレートが作れますか?

作れます。この記事で使っている SUM、ROUNDDOWN、EOMONTH、IF はエクセルにも同じ名前の関数があり、セルの配置もそのまま使えます。シートをまたぐ参照の書き方も「自社情報!B1」の形で同じです。PDFにするときは、印刷範囲を A1:F33 に設定してから、用紙サイズをA4・縦にして出力してください。

適格請求書発行事業者の登録をしていなくても、このテンプレートは使えますか?

使えます。自社情報シートの登録番号(B2)を空にしておけば、請求書の登録番号の行は空欄になり、それ以外の取引先名・日付・明細・小計・消費税・請求金額はそのまま出ます。登録番号の記載がない請求書は適格請求書にはならないので、取引先から登録の有無を聞かれたときに答えられるようにしておきます。

明細が10行に収まらない場合はどうすればいいですか?

明細の最終行(23行目)の上で行を挿入すると、小計の SUM の範囲と金額の列の式が一緒に広がります。ただし、行を増やしすぎるとA4縦1枚に収まらなくなるので、作業時間の細かい内訳は「別紙の作業報告のとおり」として品目を工程単位にまとめ、作業報告を添付する形にすると、請求書が読みやすいまま保てます。