納品は終わっているのに、請求書をまだ出していない案件が1件ある。しかもそれに気づいたのが翌月の半ば——受託で仕事をしていると、たいてい一度は経験する場面です。入金が1ヶ月ずれるだけで、外注先への支払いと重なって手元が薄くなります。
請求・入金管理とは、案件ごとに「いくら請求すべきか」「いつ入金されるか」「入金されたか」を一元で追い、請求漏れと入金遅延を早く見つける管理のことです。結論から言うと、必要なのは高機能な請求システムではなく、案件と請求の対応表を1つ持ち、月末に同じ順番で確認する習慣です。
具体的には、(1) 請求すべき案件の洗い出し、(2) 金額の確定、(3) 請求書の発行と支払期日の記録、(4) 入金予定日の記録、(5) 入金の消し込み、という5ステップを毎月同じ手順で回し、残った未入金を督促します。この記事では、1〜数名の受託チームが無理なく続けられる形で、その手順と、月末に見る項目を整理します。
この記事の要点
- 請求・入金管理の中心は請求書ではなく、「どの案件が、いつ、いくら入るか」の対応表です。これがあれば資金繰りの予測もそのまま作れます
- 月末は①請求対象の洗い出し ②金額の確定 ③請求書の発行と支払期日の記録 ④入金予定日の反映 ⑤前月分の消し込み、の順で回し、残った未入金だけを督促します。案件20件程度までなら30分ほどです
- 請求漏れは「分割請求の2回目以降」「追加作業」「保守の定額請求」で起きやすく、契約時に請求のタイミングと金額を案件情報に書いておくと防げます

請求・入金管理とは何を管理することか
請求書の作成そのものは、会計・請求サービスを使えば数分で終わります。手間がかかって漏れが出るのは、その前後です。
| 工程 | 管理する内容 | 漏れたときに起きること |
|---|---|---|
| 請求前 | 今月請求すべき案件・金額・請求条件 | 請求漏れ。売上が翌月以降にずれる |
| 請求時 | 請求書番号・請求日・支払期日 | 期日が曖昧になり督促できない |
| 請求後 | 入金予定日・入金額・消し込み | 未入金に気づかない。二重督促 |
| 遅延時 | 遅延日数・連絡履歴 | 言った言わないになる。関係が悪化する |
つまり請求・入金管理の中心は請求書そのものではなく、案件と入金予定の対応表です。請求書は会計ツールで作ればよく、受託事業者が自分で持つべきなのは「どの案件が、いつ、いくら入ってくるか」の一覧です。
この一覧があると、資金繰りの予測もそのまま作れます。入金予定と、外注先への支払予定を並べれば、その月に手元がいくら残るかが見えるからです。
請求書の前に交わす見積書・発注書・納品書がどの順で動くのかは、見積書・発注書・納品書・請求書の違いで整理しています。
請求漏れが起きる3つのパターン
請求漏れは、うっかりというより構造で起きます。受託でよくあるのは次の3つです。
1. 分割請求の2回目以降を忘れる
着手金と納品時の2回に分ける、あるいは3回に分ける契約で、初回は請求するのに2回目が抜ける。契約書には書いてあるのに、日々のタスク管理には載っていないためです。
2. 追加作業を請求し忘れる
「ついでにここも直しておきました」が積み上がり、月末には何をどこまでやったか思い出せない。金額に落とせないまま流れます。見積もりの段階で追加費用の扱いを決めておくと減ります(受託の見積もりの作り方)。
3. 保守・運用の定額請求が止まる
毎月定額の保守案件は、走り出すと請求作業が「作業」として意識されなくなります。担当が変わったタイミングで1〜2ヶ月抜ける事故が起きやすい種類です。
いずれも共通するのは、請求のトリガーが人の記憶の中にしかないことです。契約時に「請求のタイミングと金額」を案件情報として書いておけば、月末にその一覧を見るだけで済みます。
請求できない原因が検収側にあることも多く、その場合は請求の手順を直しても解決しません。合格基準や検収期間の決め方は受託の検収の進め方で取り上げています。
月末の請求手順——5ステップで回す
月末に毎回同じ順番で確認します。案件数が20件程度までなら30分ほどで終わります。
- 今月請求対象の案件を洗い出す — 納品済み・検収済みの案件、当月分の保守案件、分割請求の該当回を拾います。ここで「請求条件」を案件に書いてあるかどうかで所要時間が変わります。
- 金額を確定する — 基本金額+追加作業分。追加分は作業日と内容をメモとして残し、請求書の明細に落とせる状態にします。
- 請求書を発行し、支払期日を記録する — 請求書は会計・請求サービスで発行します。記録すべきは請求日・金額・支払期日の3つです。
- 入金予定日を一覧に反映する — 「翌月末払い」なら翌月末日を入金予定日として登録します。ここが資金繰り予測の入力になります。
- 前月分の入金を消し込む — 通帳・入出金明細と照合し、入金済みにします。残ったものが未入金です。
5番まで終わると、手元には「未入金の一覧」だけが残ります。これが督促の対象です。
入金遅延に気づく仕組みをどう作るか
入金遅延で本当に困るのは、遅れたこと自体より気づくのが遅れることです。気づくのが早ければ、支払いの順番を調整する、外注先に事情を伝えて待ってもらう、といった手が打てます。
仕組みとして必要なのは次の3つだけです。
- 支払期日を持つ:期日がない請求は、遅れているかどうかを判定できません
- 期日を過ぎたものが自動で目に入る:探しに行かないと見えない状態だと、忙しい月ほど確認を飛ばしがちです
- 督促の連絡履歴を残す:いつ誰にどう連絡したかが残っていないと、2回目の連絡がしづらくなります
督促の文面は、事務連絡として淡々と書くのが結局いちばん角が立ちません。「◯月◯日付でご請求しております件、お支払期日を過ぎておりますためご確認をお願いいたします。行き違いでしたら失礼いたします」程度で十分です。相手の経理フローの都合で単に処理が止まっているだけ、というケースも珍しくありません。
なお、遅延が常態化している取引先は、金額の大小にかかわらず記録に残しておくべきです。次の案件の見積もりで支払条件を交渉する材料になります(顧客管理のやり方)。新規の取引先で支払い遅延のリスクを先に見ておきたい場合は、受託の与信管理のやり方も参考になります。
スプレッドシートで足りるのはどこまでか
案件数が月に10件以下で、請求条件がほぼ一律なら、スプレッドシート1枚で回ります。列は「案件名/請求先/請求日/請求額/支払期日/入金予定日/入金日/状態」の8つで足ります。コピーして使える列設計と、請求日・入金予定日を自動計算する数式は請求管理のスプレッドシートテンプレートにまとめています。
限界が見えるのは、次のような状態になったときです。
- 案件シート・請求シート・資金繰りシートに同じ数字を3回入力している
- 外注費の支払予定が別のシートにあり、入金と突き合わせるのに毎回コピーしている
- 粗利を出すために、請求額と外注費を手作業で紐づけている
このあたりから、転記ミスと更新漏れのほうが管理コストを上回ってきます。スプレッドシート運用の限界サインは営業リスト管理はスプレッドシートで十分かでも整理していますが、請求・入金でも起きることは同じです。同じ数字を2箇所以上に書いていると、どこかでずれます。
請求と入金を案件に紐付けて追う
ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っているPipelia(パイプリア)は受託事業者向けのSFA/CRMで、請求書の発行機能は持っていませんが、「請求すべき案件」と「入金予定・支払予定」を管理する側を担当します。商談が受注になると案件が自動で作られるので、「受注したのに案件台帳に載っていない」という請求漏れの入口が塞がります。資金繰り画面では入金予定と外注費の支払予定を月次で12ヶ月先まで突き合わせ、回収遅延・支払遅延は警告として出るため、未入金を探しに行かずに済みます。

案件別の粗利までを一本で見たい場合は粗利管理のはじめ方、外注費の支払管理は外注管理の方法も参考にしてください。
よくある質問
請求書は Pipelia で発行できますか?
いいえ、Pipelia に請求書の発行機能はありません。請求書はお使いの会計・請求サービスで発行してください。Pipelia が担当するのは、請求すべき案件の管理と、入金予定・支払予定の突き合わせ(資金繰り)、案件別の粗利計算です。
入金予定日はどう決めればよいですか?
契約書または発注書に記載された支払条件から機械的に決めます。「月末締め翌月末払い」であれば、請求月の翌月末日が入金予定日です。条件が書面にない取引先は、次の案件のタイミングで書面に残すことをおすすめします。期日がないと、遅れているかどうかを判定できないためです。
入金遅延の督促はいつ出すべきですか?
支払期日の翌営業日を目安に、事務連絡として出すのが無難です。時間を置くほど切り出しづらくなり、金額が大きい案件ほど後回しになりがちです。行き違いの可能性に触れた短い文面で送れば、関係を悪くせずに確認できます。督促を出した日と内容は、次の連絡のために記録しておいてください。
