見積もりを出したあと、「社内で検討します」で止まったまま3ヶ月。追いかけていいのか分からず、そのうちリストの下のほうに埋もれていく——受託の現場でよく見る光景です。

先に答えを書くと、受注率は提案の巧みさだけでは決まりません。実際に効くのは分母(提案する案件)の質を揃えることと、出した後の動きを事前に決めておくことの2つです。提案内容を磨く前に、この2つを見直すほうが数字は動きます。

この記事の要点

  • 受注率=受注件数÷提案件数×100。分母(問い合わせ全件か、見積もり提出分か)は一度決めたら途中で変えず、件数と金額の両方で見る
  • 見積もりを出す前に「予算の目安」と「決裁者」の2つを聞き、最小構成と推奨構成の2段階で見積もる
  • 提出時に次の確認日を日付で置き、2回連絡して反応がなければ一度閉じて再連絡の候補に回す
受注率を上げる打ち手を3段階で示した図。見積もりを出す前に予算と決裁者を確認して段階で見積もり、出した後は次の確認日を置いて2回無反応なら閉じ、四半期ごとに失注理由と入り口別の受注率を振り返る流れが確認できる

受注率とは——計算式と分母の決め方

受注率とは、提案や見積もりを出した案件のうち、実際に受注できた割合を指す指標です。計算式は単純です。

受注率(%)= 受注件数 ÷ 提案件数 × 100

気をつけるのは、分母をどこに置くかで数字の意味が変わることです。問い合わせ全件を分母にすれば、問い合わせの質まで含めた数字になります。見積もりを提出した案件だけを分母にすれば、提案してからの決まりやすさを見る数字になります。どちらでも構いませんが、途中で定義を変えないことが条件です。

もう一つ、件数ベースだけでなく金額ベースでも見ておきます。小さい案件ばかり決まって大きい案件を落としていると、件数の受注率は高いのに売上は伸びないということが起きます。

受注率が下がる4つの原因

「決まらない」とひとくくりにせず、症状で切り分けると手の打ちようが変わります。

症状起きていること見る数字
提出後に音沙汰がない決裁者に内容が届いていない提出から返答までの日数
最後に金額で負ける前提が揃わないまま比べられている失注理由の内訳
提案までが遅い着手が遅く、温度が下がっている問い合わせから提出までの日数
そもそも合わない相手分母に無理な案件が多い入り口別の受注率

上の2つは提案の出し方の問題ですが、下の2つは提案する前の問題です。受注率が伸びないときは、まず下の2つから疑うと原因に早くたどり着けます。提案書を磨くより、どこから来た案件なのかを見直すほうが早く効きます。

受注率を上げる5つの打ち手

  1. 見積もりを出す前に、予算と決裁者を確認する。「ご予算の目安はありますか」「最終的にはどなたが決められますか」の2問です。聞きづらい質問ですが、ここを飛ばした案件は提出後に止まりやすくなります。
  2. 提出したら、次の予定を日付で置く。「ご検討ください」で終わらず、「来週の水曜に一度確認させてください」まで置いておきます。追いかけの可否を悩む時間がなくなります。
  3. 見積もりを1本ではなく段階で出す。最小構成と推奨構成を並べると、「やるかやらないか」の判断が「どこまでやるか」に変わります。金額だけで落ちる案件が減ります。
  4. 失注理由を記録して、分母を絞る。負けた理由が溜まってこないと、来年も同じ相手に同じ提案を出します。理由の分類と記録の手順は失注分析のやり方で解説しています。
  5. 入り口別に受注率を出す。紹介、サイトからの問い合わせ、フォーム営業、既存客からの追加。ルートごとに決まりやすさは全く違います。一番高いルートに時間を寄せるのが、最も早い改善です。

この中で効果が出るのが早いのは2番です。提出後に止まっている案件の多くは、断られたのではなく後回しにされているだけだからです。

追う前に「追わない案件」を決める

受注率を上げようとすると、どうしても「全部追う」方向に行きがちです。ですが1〜数名のチームでは、追う時間そのものが有限です。

先に決めておくと楽になるのは、次のような線引きです。

  • 予算の下限を下回る案件は、最初の段階で丁寧にお断りする
  • 2回連絡して反応がなければ、一度閉じて次の機会に回す
  • 納期が物理的に合わない案件は、日程をずらす提案か、断るかの2択にする

閉じるのは損に見えますが、止まった案件がリストに残り続けるほうが、判断を鈍らせます。閉じた相手も消すのではなく、再連絡の候補として残しておくのがコツです。閉じた相手にいつ・何を送るかは見込み客の追客のやり方で扱っています。

提出した見積もりを1件1行で追い、フォロー日と受注率をスプレッドシートで管理する方法は見積もり管理表をスプレッドシートで作るにまとめています。

見積もり提出後に止まっている商談を可視化する

ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っているPipeliaでは商談をカンバンで管理し、ステージごとに確度と金額を持ちます。「見積もり提出済み」の列に残ったままのカードが一目で分かるので、止まっている案件を探す必要がありません。受注すると案件が自動で生成され、そのまま工程と粗利につながります。

Pipeliaの商談カンバン画面。ステージ別にカードが並び、確度と金額が表示されている

カンバンでの商談管理の始め方はカンバン式パイプライン管理のはじめ方で紹介しています。

よくある質問

受注率の目安はどのくらいですか?

業種や案件の入り口によって大きく違うため、外部の平均値を目標に置いてもあまり意味がありません。見るべきは自社の推移です。同じ定義で四半期ごとに並べ、上がったか下がったかと、その時に何を変えたかを紐づけて見てください。

値引きすれば受注率は上がりませんか?

一時的には上がりますが、粗利率が下がるので手元に残る額は増えないことがあります。受注率と平均粗利率はセットで見るのが安全です。金額で押すより、先に範囲を段階化して提示するほうが、粗利を削らずに決まりやすくなります。

何件くらいから測れますか?

月に数件しか提案しない規模では、月単位の受注率は大きくぶれます。四半期や半年でまとめ、あわせて失注理由の内訳を見ると傾向が読み取れます。件数が少ないうちは、率よりも1件ごとの負けた理由を残すほうが役に立ちます。