初回のヒアリングは手応えがあったのに、提案書を送ったあと返事が来ない。あとから聞くと「金額で他社に決めました」——受託の現場でよくある負け方です。原因は金額そのものより、提案書が「いくらかかるか」しか伝えていないことにあります。

受注につながる提案書は、課題の言い換え → 提案の全体像 → 作業範囲 → 体制と役割分担 → スケジュール → 金額 → 前提条件と次のアクション の7項目で構成します。このうち勝敗を分けるのは最初の「課題の言い換え」と、最後の「前提条件」です。前者で「この人はうちの状況を分かっている」と思わせ、後者で「あとから追加費用でもめない」と安心してもらえれば、金額だけの比較から抜けられます。

受託の提案書とは、ヒアリングで聞いた相手の課題に対して、解決の方針・作業範囲・体制・スケジュール・金額をひとまとめにして示す資料です。見積書が「いくらか」を答える書類であるのに対し、提案書は「なぜその金額になるのか」を答える書類だと考えると分かりやすくなります。

この記事の要点

  • 提案書は「課題の言い換え→全体像→作業範囲→体制→スケジュール→金額→前提条件と次のアクション」の7項目で書き、見積書とは分けて「なぜその金額なのか」に答える資料にします
  • 勝敗を分けるのは最初の課題の言い換えと最後の前提条件です。追加費用の条件(例:デザイン修正は2回まで、以降は1回あたり◯円)を具体的に書くと、金額だけの比較から抜けられます
  • 書く前に「決裁の流れ」「予算と時期」「粗利の下限」の3つを確定させ、提出後は3〜5営業日で確認の連絡を入れます
受託の提案書の構成7項目を上から順に並べ、1番目の課題の言い換えと7番目の前提条件・次のアクションが金額だけの比較から抜ける決め手になることを示した図。各項目で書くべき要点も確認できる

提案書と見積書の違い——役割を分けて書く

提案書と見積書を1枚にまとめると、読み手はまず合計金額に目が行き、そこから先を読みません。役割を分けて、提案書で納得を作ってから金額を見せる順番にします。

書類答えている問い主な読み手分量の目安
提案書なぜこの進め方なのか/なぜこの金額なのか担当者・その上長5〜10ページ
見積書いくらか/内訳はどうなっているか決裁者・経理1〜2ページ
契約書・発注書何を・いつまでに・いくらで法務・経理規定の書式

小規模な案件なら、提案書は資料を作り込まず、メール本文+見積書の2点でも成立します。大事なのは形式ではなく、7項目が抜けていないことです。見積書・発注書・請求書など受託で交わす書類全体の流れは見積書・発注書・納品書・請求書の違いで整理しています。

受注につながる提案書の構成7項目

上から順に書きます。読み手が判断に使う順番と同じだからです。

  1. 課題の言い換え——ヒアリングで聞いた内容を、こちらの言葉で1〜3行に要約する。「サイトを新しくしたい」ではなく「問い合わせが月◯件で頭打ちのため、導線を作り直したい」まで踏み込む
  2. 提案の全体像——何をどう解決するかを1ページで。図や画面イメージが1枚あると理解が速い
  3. 作業範囲(スコープ)——やること・やらないことを箇条書きで並べる。「やらないこと」を書くのが要点
  4. 体制と役割分担——自社が担当する範囲、外注に出す範囲、相手側にお願いする作業(原稿・写真・確認)を明記する
  5. スケジュール——工程と、相手の確認が必要なタイミングを日付で示す
  6. 金額——見積書へのつなぎ。内訳の考え方だけ提案書側に書く
  7. 前提条件と次のアクション——追加費用が発生する条件、有効期限、次に何をしてほしいか(発注書の返送、キックオフ日程の候補提示など)

4と5は忘れられがちですが、相手側の作業と確認タイミングを先に見せておくと、着手後の「原稿が出てこなくて止まる」を減らせます。ヒアリングで聞くべき項目は受託のヒアリングシートの作り方にまとめています。

提案書を書く前に確定させておく3つのこと

提案書が書けないときは、たいてい書く前の材料が足りていません。着手前に次の3つを埋めます。

  1. 決裁者と決裁の流れ——担当者の一存で決まるのか、稟議が要るのか。稟議があるなら、社内を通すための材料(費用対効果の説明)を提案書に入れる
  2. 予算感と時期——おおよその予算と、いつまでに動きたいか。ここが空欄のまま作った提案書は、金額が高すぎるか安すぎるかのどちらかになりやすい
  3. 粗利の下限——この案件でいくら残れば受けるのか。外注費を含めた原価から逆算します。積算の手順は受託の見積もりの作り方を参照してください

3つ目を先に決めておくと、値引きを求められたときに「範囲を減らして金額を下げる」という交渉ができます。粗利の下限を決めずに値引きすると、受注はできても手元に残りません。

見積もりへのつなげ方——金額を「読める」形にする

金額のページで比較されないためには、合計だけでなく「何にいくらかかっているか」が読める形にします。

  • 工程別に分ける(設計/デザイン/実装/テスト/ディレクション)。人数×日数が見えると、値切りの対象が「作業量」に変わり、単価そのものを叩かれにくくなる
  • オプションを分けて書く——必須でない項目は本体と分け、外せる形で見せる。総額が高いと感じられたときの調整余地になります
  • 保守・運用を並記する——公開後の更新や監視を月額で並べておくと、単発で終わらず継続の話につながります。進め方は受託の保守・運用契約の作り方で解説しています
  • 追加費用の条件を書く——「デザイン修正は2回まで、以降は1回あたり◯円」のように具体的に。前提条件の章とセットで書きます

金額の妥当性を自分で説明できるかどうかは、粗利で確かめられます。売上から外注費を引いた粗利率が社内の基準を下回るなら、範囲か金額のどちらかを見直すサインです。

Pipeliaの粗利画面。案件別の粗利率と月次推移が一覧で表示され、粗利率が基準を下回る案件に警告が付いていることが確認できる

提案書は出して終わりではない——提出後の追いかけ方

提出直後が最も関心が高く、日が経つほど返事は遠くなります。提出時に次の3つを決めておきます。

  1. 返答の期限を先に伝える——「見積もりの有効期限は◯月◯日です」と書き、期限の理由(稼働の押さえ)を添える
  2. 提出の3〜5営業日後に確認の連絡を入れる——「社内で回覧されましたか、追加で必要な資料はありますか」と、相手の作業を進める聞き方にする
  3. 止まったら理由を記録する——予算・時期・他社比較のどれで止まったのかを残す。次の提案の材料になります

提出後に止まる案件を動かす打ち手は受注率の上げ方で、負けた案件の振り返り方は失注分析のやり方で詳しく扱っています。

提案書を出した案件が何件あり、それぞれいつ提出して次にいつ連絡するのかは、頭の中ではなく一覧で持っておくのが確実です。案件が5件を超えたあたりから、記憶とメール検索では追いきれなくなります。

Pipeliaの商談カンバン画面。ステージごとに商談カードが並び、確度と金額が表示されていることが確認できる

提案から受注後の粗利までを同じデータで追う

ここからは自社製品の紹介です。Pipelia(パイプリア)は受託事業者向けのSFA/CRMで、商談カンバンで提案中の案件の確度と金額を管理し、受注すると案件が自動で作られます。案件に外注先と発注額を記録すると粗利が案件別に自動計算されるため、提案時に見込んだ粗利と、終わってからの実績を比べられます。提出後の再連絡は、営業リストの再連絡アラートで拾えます。

よくある質問

提案書は何ページくらいが適切ですか?

案件規模によりますが、受託の小〜中規模案件なら5〜10ページで足ります。ページ数より、7項目(課題の言い換え/全体像/範囲/体制/スケジュール/金額/前提条件)が揃っているかを優先してください。100万円未満の案件なら、メール本文で7項目を書き、見積書を添付する形でも成立します。

提案書は無料で作るべきですか?

初回の提案までを無料の営業活動と位置づけ、そこから先の詳細設計や要件定義は有償にする線引きが一般的です。調査や設計に数日かかる規模なら、「要件定義フェーズ」として提案書の中に有償の第1フェーズを立て、その成果物として詳細な提案・見積もりを出す進め方もあります。どこまで無償で書くかは、案件の粗利見込みから判断すると迷いません。

相見積もりで金額を下げてほしいと言われたらどうしますか?

金額だけを下げると粗利が削れるので、まず作業範囲を一緒に見直します。「この機能を次フェーズに回せば◯円下がります」のように、範囲と金額をセットで提示するのが基本です。あわせて、社内で決めた粗利の下限を下回る場合は無理に受けない判断も必要になります。判断の基準は受託で案件を断る基準で具体的に書いています。