「今回は見送りで」と言われた会社の名前を、半年後に別の制作会社の実績ページで見つけた。受託で営業をしていると、こういうことが起こります。断られたのではなく、そのときが発注のタイミングではなかっただけ。それでも連絡が途切れていれば、次に外注先を探すときに思い出してもらえません。
結論から書くと、追客の成果を分けるのは文面のうまさではなく、「次にいつ連絡するか」をその場で決めて記録に残しているかどうかです。返事が保留になった瞬間に次回の連絡日を入れておけば、追客は「思い出す作業」ではなく「その日のリストを開く作業」に変わります。1〜数名の受託チームで回すには、ここが要になります。
追客とは、すぐに受注へ至らない見込み客に対して、検討が動き出す時期まで一定の間隔で接点を持ち続ける営業活動です。新規開拓が「知ってもらう」ための活動だとすれば、追客は「思い出してもらう」ための活動にあたります。
この記事の要点
- 打ち合わせや電話が終わったその場で次回連絡日を入れ、前回の話を「予算は4月以降、決裁は部長」程度の1行で残す
- 再連絡の間隔は相手の状態で決める。時期が決まっているならその2〜3週間前に1回、未定なら2〜4週間ごと、失注した相手は3ヶ月後に1回
- 週に1回その週の再連絡リストを開き、4つの文面の型で処理する。3回送って反応がなければ間隔を半年に落とし、リストからは消さない

追客が続かない3つの原因
追客が止まるのは、やる気の問題ではありません。ほとんどの場合、次の3つのどれかです。
1. 次回の連絡日が決まっていない
「また連絡します」で会話を終えると、再開の合図がどこにも残りません。思い出したときにだけ連絡する運用は、案件が立て込んだ月に止まりがちです。逆に日付さえ決まっていれば、その日にリストへ出てくるので、判断は「送るか、日をずらすか」の二択で済みます。
2. 追う相手を絞っていない
名刺交換した全員を等しく追おうとすると、量に負けて全部止まります。追客は「見込みの濃い相手に、決めた間隔で」続けるから効くのであって、広く薄く続けるものではありません。誰を追い、誰を追わないかを先に決めます。
3. 送る内容を毎回ゼロから考えている
「何を書けばいいか分からない」は、そのまま先延ばしの理由になります。後述する4つの型を用意しておくと、1通あたりの検討時間が数分に縮み、手が止まりにくくなります。
追客する相手はどう絞るか——状態別の再連絡間隔の目安
追客の設計は、相手の温度ではなく「相手の状態」で分けると崩れません。次の表は、受託の現場で使いやすい分け方と間隔の目安です(正解というより、自社の案件サイクルに合わせて調整する前提の目安です)。
| 見込み客の状態 | 具体例 | 再連絡の間隔の目安 |
|---|---|---|
| 検討時期が決まっている | 「来期の予算が固まってから」 | その時期の2〜3週間前に1回 |
| 検討中だが時期は未定 | 「社内で相談してから戻します」 | 2〜4週間ごと |
| 比較で他社に決まった | 見積もり提出後に失注 | 3ヶ月後に1回、以降は半年ごと |
| 過去に取引があり今は案件なし | 納品済みの既存顧客 | 四半期に1回 |
| 初回接触のみで反応がない | 問い合わせ後に返信なし | 3回まで送り、以降は間隔を空ける |
分け方のポイントは、時期が決まっている相手を最優先にすることです。「予算が付いたら」と言われた案件は、時期の直前に一度連絡するだけで検討テーブルに戻れることがあります。逆に、反応がまったくない相手を粘り強く追っても、時間の使い方としては割に合いません。
失注した相手を追客リストに残すかどうかは、負けた理由によって変わります。理由の記録の仕方は失注分析のやり方で解説しています。
追客で送る内容——売り込まずに接点を保つ4つの型
追客のメールが送りにくいのは、送る側が「催促」だと感じているからです。相手にとって役に立つ情報を1つ足す形にすると、書く側の抵抗が減ります。
型1: 相手の動きに反応する
相手企業の新サービス、採用、リニューアルなどの動きに触れて連絡します。見ていることが伝わるだけで、他社の一斉送信とは別の扱いになります。
先日、御社の採用ページが新しくなっているのを拝見しました。〇〇の件は社内でご検討中とうかがっていましたが、その後いかがでしょうか。
型2: 判断材料を1つ足す
前回の会話で相手が迷っていた点について、判断材料を追加します。参考事例、概算の進め方、体制の説明など、相手が社内を説得するために使える材料が向いています。
型3: 期日を思い出させる
「来期に」と言われた案件は、その時期の少し前に連絡します。制作や開発は着手から納品までの期間が読みにくいので、逆算のスケジュールを添えると具体性が出ます。
4月公開をご希望とうかがっていたので、逆算のスケジュールだけ簡単にお送りします。要件のすり合わせに2週間、制作に6週間を見ると、2月中旬の着手が目安になります。
型4: 近況をひとこと
送る材料が特にないときは、短くて構いません。長い文面より、読むのに10秒しかかからない連絡のほうが、相手にとって返信のハードルが下がります。
文面そのものの作り方は営業メールの差し込み一括送信、フォーム営業のやり方でも扱っています。
追客を仕組みにする5つの手順
型が決まったら、あとは運用に落とします。次の5つで、1人でも回る形になります。
- 追客対象を1か所に集約する。名刺、問い合わせフォーム、過去の失注案件、既存顧客が別々の場所にあると、追客のリストは作れません。最初に営業リストへまとめます(集める項目は営業リストの作り方を参照)。
- 会話が終わったその場で次回連絡日を入れる。打ち合わせの直後、電話を切った直後がいちばん確実なタイミングです。あとで入れようとすると、たいてい入りません。
- 前回何を話したかを1行で残す。「予算は4月以降、決裁は部長」程度で十分です。この1行があるかどうかで、次の連絡の書き出しが決まります。
- 週に一度、その週の再連絡リストを開く。曜日と時間を固定します。1件あたり数分で処理できる状態にしておくのがコツです。
- 打ち切り基準を決めておく。「3回送って反応がなければ間隔を半年に落とす」など、やめ方を先に決めておくと、追う相手が無限に増えません。
既存顧客は、初めての相手より話が早く進みやすい追客先です。追加案件を取りこぼさない考え方はリピート受注を増やす方法にまとめています。
再連絡アラートで「そのうち客」を拾い直す
ここからは自社製品の紹介です。ここまでの手順はスプレッドシートでも組めますが、行が増えるほど「次回連絡日で絞る」「会話と連絡の記録を残す」の両立が重くなります。私たちが作っているPipeliaの営業リストでは、優先スコアと再連絡アラートで「今日連絡すべき相手」が上に並び、架電・メール・フォーム営業の記録はそのまま見込み客に紐づきます。商談化すればカンバンへ移り、受注・案件・粗利までつながります。

よくある質問
追客はいつまで続ければいいですか?
期限で切るより、状態で切り替えるほうが運用しやすくなります。反応がない相手は3回程度で間隔を半年に落とし、リストから消さずに残しておく形が現実的です。受託は発注のタイミングが数年単位でずれることがあるため、完全に削除するのは早すぎることが多いです。
追客メールの頻度はどのくらいが適切ですか?
検討中で時期が未定の相手なら2〜4週間ごと、時期が決まっている相手ならその直前に1回が目安です。週単位の連絡は催促と受け取られやすいので、間隔を詰めるより、送る内容に判断材料を足すほうが効果的です。
一度断られた見込み客に、もう一度連絡してもいいですか?
問題ありません。他社に決まった案件でも、体制やスケジュールの都合で次回は声がかかることがあります。ただし失注直後は避け、3ヶ月ほど空けてから、当時の案件の話ではなく現在の状況を尋ねる形で連絡すると自然です。見積もり提出後に止まる案件を減らす打ち手は受注率の上げ方で紹介しています。
