見積もりを出して、そのまま連絡が途絶える。数週間後に「今回は見送りで」と短いメールが届いて終わり。理由を聞くタイミングもなく、次の見積もりでも同じことを繰り返す——このループから抜けるのが失注分析です。

結論から言うと、失注分析に大がかりな集計は不要です。やることは2つだけ。(1) 失注したときに理由を5つの区分のどれかに当てはめて記録する、(2) 月に1度、区分ごとの件数を数えて一番多いものを一つだけ改善する。月に数件の商談しかない規模でも、この2つなら回ります。

失注分析とは、受注に至らなかった商談の理由を記録・分類し、次の提案の改善につなげる取り組みです。大事なのは、失注の多さを反省することではなく、同じ理由で二度負けないようにすることです。

この記事の要点

  • 失注分析は、失注時に理由を「価格」「タイミング」「実績・信用」「対応範囲」「レスポンス」の5区分から1つ選んで記録し、月に1度15分、件数が最も多い区分を1つだけ改善すれば回ります
  • 理由は推測で埋めず、断りの連絡への返信で選択肢形式で聞きます。聞けなければ「不明」と残し、母数が小さいうちは割合ではなく件数で見ます
  • 失注先は優先度の高い見込み客です。タイミングが理由なら聞いた検討時期の1ヶ月前に、価格が理由なら範囲を分けた小さな提案に変えてから再連絡します
失注理由ごとの次の一手を示した図。失注理由を価格・タイミング・実績と信用・対応範囲・レスポンスの5区分に分け、価格なら分割して再提案、タイミングなら検討時期の1ヶ月前に連絡といった打ち手が確認できる

なぜ受託では失注理由が残らないのか

受託の商談は、失注が「イベントなく終わる」のが特徴です。断りの連絡が来ないまま自然消滅するケースが多く、「いつ負けたのか」の区切りがないため、記録を残すタイミングもやって来ません。

もう一つは、失注の直後は別の制作案件が動いていることです。手を止めて振り返る余裕がなく、「今回は予算が合わなかったんだろう」という推測で閉じてしまいます。この推測がくせ者で、実際には別の理由だった場合でも「値段が高いから負けた」と思い込むことになります。その結果、下げる必要のない値段を下げて粗利を削るという逆効果にもつながります。値下げしてよいかどうかは、過去案件の粗利率を見れば判断できます(計算の仕方は粗利管理のはじめ方を参照してください)。

だから失注分析は、記憶が消える前に、1行だけ残すところから始めます。

失注理由は5つに分ける

自由記述だけでは後で数えられません。次の5区分のどれかを選び、補足を一言添える形にします。

失注理由具体例打つべき手
価格他社より高かった見積根拠の内訳提示、段階分割の提案
タイミング予算期が合わない・先送り次期の検討時期を聞いて再連絡日を置く
実績・信用同業種の実績がなかった近い事例の提示、体制の説明を先にする
対応範囲月次運用まで含めて頼みたかった外注先との体制で範囲を広げる
レスポンス返信・見積提出が遅かった初回返信の期限を自分で決める

この5つにしているのは、すべて自分で手を打てる区分だからです。「先方の社内事情」のような区分を作ると、そこに全部入って次の行動につながらなくなります。

レスポンスの遅れを入れているのは、受託ではこれがたびたび真因になるからです。制作が繁忙な時期に入った問い合わせへの返信が数日遅れ、その間に他社で決まっていた——というケースは少なくありません。

失注理由をどうやって聞くか

推測で埋めると分析の意味がなくなるので、可能な限り本人に聞きます。ポイントは3つです。

  1. 断りの連絡への返信で聞く — お礼と一緒に「今後の参考にさせていただきたいのですが」と切り出す。断った直後は相手も答えやすいタイミングです
  2. 選択肢で聞く — 「価格でしょうか、それとも時期でしょうか」のように聞くと返答率が上がります。自由回答を求めると返事が来なくなります
  3. 価格と言われたら一歩掘る — 「金額帯が合わなかった」のか「金額に見合う内容に見えなかった」のかで、打つ手は正反対です

聞けなかった場合は、「不明」として残してかまいません。推測で埋めたデータより、不明が何件あるか分かるデータのほうが役に立ちます。不明が半分を超えているなら、分析より先に「失注時に一言聞く」運用を定着させるのが先です。

月に1度の振り返りの手順

集めた記録は、月末に15分見るだけで十分です。

  1. 先月失注した商談を区分ごとに数える
  2. 一番多い区分を一つだけ選ぶ
  3. その区分に対して、次の1ヶ月で変えることを1つだけ決める
  4. 翌月、同じ区分の件数が減ったかを見る

複数の改善を同時に入れると、何が効いたのか分からなくなります。月数件の商談ではもともと母数が小さいので、1ヶ月に1つだけ変えるのが現実的です。

なお、母数が小さいうちは月ごとの振れが大きいため、割合ではなく件数で見ることをおすすめします。「価格が40%」と言われても、分母が5件なら実態は2件です。失注が多い区分が分かったあとの具体的な打ち手は、受注率の上げ方で5つに分けて紹介しています。

失注先はいつ再アプローチするか

失注した相手は、営業リストの中でも優先度の高い層です。一度見積もりを見ているので、こちらの値段感と対応範囲をすでに知っています。

再アプローチの時期は、失注理由によって変えます。

  • タイミングが理由なら、聞いた検討時期の1ヶ月前に連絡する。これが一番戻ってきやすいパターンです
  • 価格が理由なら、同じ内容で再提案しても結果は変わりません。範囲を分割した小さい提案に形を変えてから連絡します
  • 実績が理由なら、近い業種の事例ができたタイミングが連絡の口実になります

いずれも、失注した時点で次回連絡日を決めておくのが前提です。この部分の仕組み化はリピート受注を増やす方法と同じです。再連絡の文面や間隔の決め方は見込み客の追客のやり方でも扱っています。

失注理由を記録して次の商談に返す

ここからは自社製品の紹介です。失注分析が続かない一番の理由は、商談の情報と記録先が別々の場所にあることです。私たちが作っているPipeliaでは、商談をカンバンでステージ・確度・金額ごとに管理できるので、「提案までは行くが決裁で止まる」といった傾向に気づけます。失注した相手に次回連絡日を入れておけば、期日が来たときに営業リストの再連絡アラートで拾えます。

Pipeliaの商談カンバン画面。ステージ別に並んだ商談と、確度・金額が確認できる

よくある質問

失注理由を聞くのは失礼になりませんか?

断りの連絡へのお礼と一緒に、短く一問だけ聞く分には、失礼に受け取られることはまずありません。選択肢形式で聞くと相手の負担が小さくなります。ここで食い下がったり、値引きを提示して覆そうとすると印象が悪くなるので、あくまで今後の参考として聞くにとどめます。

商談が月数件しかなくても分析になりますか?

なります。ただし割合ではなく件数で見てください。月数件の規模でも、半年分を並べると「毎回同じ区分で落ちている」パターンは見えてきます。分析の目的は統計を取ることではなく、同じ理由での連敗に気づくことです。

自然消滅した商談はいつ失注にすればいいですか?

自分で期限を決めてください。例えば「最終接触から1ヶ月連絡がなければ失注扱い」と決めておくと、商談一覧が実態と合います。重要なのは失注にすること自体ではなく、そのタイミングで理由の区分と次回連絡日を入れることです。閉じずに残しておくと、商談一覧が死んだカードで埋まります。