「一式 80万円」——受託の見積もりが実質1行で終わってしまうことは、珍しくありません。相手も細かい内訳までは求めてこないし、こちらも工数を積み上げる時間が惜しい。ところが納品が近づくころ、想定になかった修正が積み重なり、外注費が膨らみ、結局いくら残るのか分からなくなる。あの1行が、数ヶ月後の粗利を先に決めていたわけです。

結論から書きます。受託の見積もりは、作業を下から足し算していくだけで作るより、確保したい粗利から先に金額を逆算し、そのうえで内訳を積み上げて確かめるほうが崩れにくくなります。足し算だけで作った見積もりは、値引きや仕様変更を求められたときに「どこまでなら受けられるか」の基準を持てないからです。

見積もりとは、作業範囲・工数・外注費・納期・前提条件を金額として提示し、受注前に発注者と認識をそろえるための書面です。金額を伝える紙であると同時に、「どこまでやるか」を決める合意文書でもあります。この記事では、1〜数名で受託をしている方に向けて、粗利から逆算する見積もりの作り方を5つのステップで整理し、見積書に書いておきたい項目と、追加費用でもめないための書き方までをまとめます。

なぜ受託の見積もりは粗利から逆算するのか

作業を積み上げて合計を出す方法は、見積もりの基本です。ただ、受託の現場ではこの積み上げだけだと足りない場面があります。理由は2つあります。

ひとつは、積み上げた金額に「残るかどうか」の情報が入っていないことです。作業時間を単価で掛けた合計は、外注費を引いたあとに何割残るのかを教えてくれません。粗利率が20%を切っている案件でも、見積書の上ではきれいに成立してしまいます。

もうひとつは、値引き交渉のときに判断できなくなることです。「あと10万円下がりませんか」と言われたとき、積み上げの合計しか持っていないと、下げてよいのか、下げると赤字なのかが即答できません。逆算で「この案件は粗利◯万円を確保したい」と決めてあれば、下げられる幅も、下げる代わりに削る作業範囲も、その場で判断できます。

逆算といっても難しい計算ではありません。架空の例で示します。

項目(架空の計算例)金額
外注費の見込み30万円
確保したい粗利率40%
逆算した売上(30万円 ÷ 0.6)50万円
粗利20万円

外注費が30万円かかりそうで、粗利率を40%は確保したいなら、見積もりは50万円が下限になります。この数字を先に置いてから、作業の積み上げが50万円に収まるかを確認する。収まらなければ、範囲を削るか、金額を上げるか、受けないかの三択です。粗利率そのものの考え方は粗利管理のはじめ方にまとめています。

見積もりの作り方——5つのステップ

  1. 作業範囲を書き出す。ページ数・機能・画面数など、数えられる単位に分解します。この段階で「含まないもの」も同時にメモしておくと、後の前提条件の欄がそのまま埋まります。
  2. 工数を見積もる。各作業に必要な日数・時間を置きます。自分でやる作業と外注に出す作業を、この時点で分けておきます。
  3. 外注費を確定に近づける。外注に出す作業は、可能なら発注先に概算をもらってから見積もりに入れます。ここが曖昧なまま提出した見積もりは、あとから粗利を削る原因になりやすい部分です。
  4. 粗利から逆算して金額を置く。前章の計算です。外注費と確保したい粗利率から下限を出し、積み上げた工数と突き合わせます。
  5. バッファを入れる。仕様変更や検証の手戻りは、ある前提で置いておきます。金額に上乗せするか、納期に余裕を持たせるか、方法はどちらでも構いません。バッファを一切持たない見積もりは、1回の手戻りで粗利が消えます。

順序として大事なのは、3を2の直後に置くことです。外注費が読めていない状態で金額を決めてしまうと、逆算の土台そのものが動いてしまいます。発注の管理については外注管理の方法でも書いています。

見積書に書いておきたい項目

金額の作り方が決まったら、次は書面です。トラブルの多くは金額そのものではなく、範囲と条件の書き方から生まれます。

項目書く内容抜けたときに起きること
作業範囲対象のページ・機能・画面を数えられる形で「これも入っていると思っていた」の水掛け論になる
含まないもの原稿作成、素材撮影、公開後の運用など無償対応が積み上がり、粗利が削られる
前提条件支給される素材、確認の回数、担当者の決裁範囲相手側の遅れが自分の納期遅れとして扱われる
修正回数「デザイン2回まで」など上限修正が終わらず、工数だけが伸びる
納期と条件着手日の起点(発注日か素材支給日か)素材待ちの期間が納期に含まれてしまう
支払条件締め日・支払日・着手金の有無入金が想定より遅れ、外注費の支払いが先行する
有効期限提出から◯日など数ヶ月後に当時の金額で発注される

すべてを長文で書く必要はありません。それぞれ1〜2行で十分です。重要なのは、口頭で合意した内容が書面のどこかに文字として残っていることです。

支払条件は、金額と同じくらい効きます。入金が翌々月末で外注費の支払いが翌月末なら、その差の期間は自分が立て替えることになります。着手金を設定できるかどうかで、案件の資金繰りは大きく変わります。

追加費用でもめないための書き方

見積もりの範囲外の依頼が来たときに、気まずくならずに追加費用を出せるかどうかは、見積書の書き方でほぼ決まります。ポイントは3つです。

  • 「含まないもの」を最初に見せておく。後から「それは別料金です」と言うより、見積もりの時点で「この見積もりに含まないもの」として並べておくほうが、相手も納得しやすくなります。
  • 追加時の単価を先に書いておく。「範囲外のご依頼は◯円/時間、または都度お見積もり」と一文入れておくと、追加が発生したときの会話が価格交渉ではなく確認になります。
  • 変更のたびに書面を更新する。口頭やチャットで決まった変更は、その日のうちに金額と納期へ反映して相手に送ります。まとめて最後に精算しようとすると、認識のずれが積み上がった状態で交渉することになります。

追加費用の話は、相手を疑うためのものではありません。範囲が動いたときに双方が同じ数字を見られるようにしておくための準備です。

ここからは自社製品の紹介です——見積もり金額と粗利の答え合わせ

見積もりで大変なのは、実は作るところよりあとで答え合わせをするところです。50万円で見積もった案件は、結局いくら残ったのか。外注費は想定の30万円で収まったのか。この確認が月末の手計算になると、次の見積もりに何も活かせません。

Pipelia(パイプリア)は受託事業者向けのSFA/CRMです。見積書そのものを作る機能はありませんが、見積もった金額を商談の金額として持たせ、受注後の外注費と突き合わせるところまでが一本でつながっています。

Pipeliaの商談カンバン画面。ステージごとに確度と金額を管理し、受注すると案件が自動生成される

商談はカンバンで管理し、受注すると案件が自動で作られます。その案件に発注を登録すると外注費が積み上がり、粗利(売上−外注費)が自動で計算されます。見積もり時に置いた粗利率と、実際に残った粗利率を並べて見られる状態です。

Pipeliaの粗利画面。案件別の売上・外注費・粗利率と月次推移が自動計算され、粗利率20%未満の案件は警告される

粗利率が20%を下回った案件には警告が出ます。「逆算では40%のはずが、実際は18%だった」という案件を見つけたら、どのステップで崩れたのか——外注費の読み違いか、範囲外の無償対応か——を振り返る材料になります。この繰り返しが、次の見積もりの精度を上げます。

料金はFreeプランが0円(営業リスト100件・1ユーザー)、Proプランが1,100円/ユーザー・月(税込)で、初回3ヶ月は無料です。デモ環境は登録もメールアドレスも不要で、開くだけで商談・粗利の画面を触れます。

よくある質問

見積もりに「一式」と書くのはだめですか?

だめではありません。相手が詳細な内訳を必要としない場合、見積書の見た目は「一式」で構いません。ただし、手元の計算まで一式で済ませてしまうと、値引きを求められたときに削れる範囲が分からなくなります。提出用は簡潔に、手元には作業範囲と工数の内訳を残しておく、という使い分けをおすすめします。

相見積もりで値引きを求められたら、どう判断すればよいですか?

粗利から逆算した下限と比べて判断します。外注費が30万円で粗利率40%を確保したいなら下限は50万円で、それを下回る値引きは範囲を削らないと受けられない、という形で答えが出ます。金額だけを下げるのではなく、「この作業を範囲外にすれば◯万円下げられます」と提示するのが、双方にとって納得しやすい進め方です。

見積もりの精度を上げるには何から始めればよいですか?

過去案件の答え合わせから始めるのが近道です。見積もり時に想定した外注費・粗利率と、実際の金額を並べてみると、自分の見積もりがどの部分で甘くなりやすいかが見えてきます。多いのは外注費の読み違いと、範囲外の無償対応の積み重ねです。数件分を振り返るだけでも、次の見積もりで置くバッファの根拠になります。