「今月は営業をがんばった」と思っているのに、月末に数えてみると受注は1件も増えていない。逆に、数字を追いかけようとして指標を10個も並べたものの、集計が面倒になって3週間で更新が止まってしまった。1〜数名の受託チームでよく起きる、営業KPIのつまずき方です。
結論から言うと、受託事業者の営業KPIは「行動量」「商談数」「粗利」の3つに絞るのが現実的です。指標が多いほど管理は良くなりそうに見えますが、営業専任がいないチームでは集計コストがそのまま更新停止につながります。3つなら週15分で見直せます。
そして目標値は、売上ではなく粗利から逆算して決めます。受託は外注費の比率で手残りが大きく変わるため、売上KPIだけを追うと「受注は増えたのに資金繰りが苦しい」という状態になりやすいからです。
この記事の要点
- 受託の営業KPIは「行動量(週次)」「商談数(週次)」「粗利(月次)」の3つに絞り、短い周期で見るのは自分で動かせる指標だけにする
- 目標値は粗利から逆算する。例:粗利目標30万円÷粗利率30%=受注額100万円→単価50万円で2件→受注率25%で商談8件→商談化率10%で行動量月80件(週20件)
- 毎週同じ曜日に15分、行動量の進捗・商談数の増減・1週間以上止まっている商談・失注理由の4点を見る

営業KPIとは何か——受託事業者にとっての定義
営業KPIとは、売上や粗利といった最終成果に至るまでの過程を数値化し、達成度を途中で確認するための指標です。KPI は Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略で、「結果が出てから気づく」状態を「途中で軌道修正できる」状態に変えるために使います。
受託事業者の場合、最終成果は「受注」ではなく「粗利」です。受注額が同じ100万円でも、外注費が20万円の案件と70万円の案件では手元に残るものがまったく違います。KPIの出発点を粗利に置くこと、これが受託ならではのポイントです。粗利の考え方そのものは粗利管理のはじめ方で詳しく書いています。
受託の営業KPIは3つに絞る——「行動」「商談」「粗利」
追うべき指標は次の3つです。それぞれ「自分でコントロールできる度合い」が違うので、役割も分けて考えます。
| KPI | 何を数えるか | 役割 | 見る頻度 |
|---|---|---|---|
| 行動量 | 架電・メール・フォーム送信・訪問の件数 | 自分で100%コントロールできる。低調ならすぐ手を打てる | 週次 |
| 商談数 | 提案・見積もり提出まで進んだ件数 | 行動が成果に変換されているかの中間確認 | 週次 |
| 粗利 | 受注案件の売上−外注費 | 最終成果。目標値の出発点になる | 月次 |
行動量は「やった分だけ増える」指標です。だから週の前半で遅れに気づけば、後半で取り返せます。一方で粗利は相手の都合で決まる部分が大きく、週単位で一喜一憂しても意味がありません。短い周期で見るのは自分で動かせる指標だけ、と決めておくと運用が続きます。
なお架電を主軸にしている場合は、電話営業のリスト管理とKPIでより細かい架電指標の置き方を説明しています。
KPIの目標値はどう決めるか——粗利から逆算する4ステップ
目標値は「なんとなく月30件」ではなく、粗利目標から逆算します。手順は4つです。
- 月の粗利目標を決める。固定費(人件費・家賃・ツール費など)+残したい利益で置きます。
- 平均粗利率で割って、必要な受注額を出す。過去半年の案件の粗利率を平均すれば十分です。
- 平均受注単価で割って、必要な受注件数を出す。
- 受注率と商談化率で割り戻して、必要な商談数と行動量を出す。
数字を入れてみます。以下は計算方法を示すための例であり、業種や商材で大きく変わります。自社の実績値に置き換えてください。
| ステップ | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 粗利目標 | — | 30万円/月 |
| 必要受注額 | 30万円 ÷ 平均粗利率30% | 100万円/月 |
| 必要受注件数 | 100万円 ÷ 平均単価50万円 | 2件/月 |
| 必要商談数 | 2件 ÷ 受注率25% | 8件/月 |
| 必要行動量 | 8件 ÷ 商談化率10% | 80件/月(週20件) |
逆算してみると「週20件アプローチする」という具体的な行動が出てきます。ここまで落ちて初めてKPIは日々の判断に使えます。逆に、この逆算をせずに行動量だけ決めると、達成しても粗利目標に届かないという事態が起きます。
平均粗利率・平均単価・受注率は、最初は概算で構いません。3ヶ月も回せば実績が溜まり、精度は自然に上がります。受注率そのものを引き上げる打ち手は受注率の上げ方で紹介しています。
週次で何を見るか——15分でできる振り返りの手順
KPIは決めた後の運用がすべてです。毎週同じ曜日に15分、次の順番で見ます。
- 行動量の進捗(今週の実績/週の目標)。未達なら、翌週にリカバリー分を上乗せする
- 商談数の増減。行動量は足りているのに商談が増えないなら、リストかトークの問題
- 止まっている商談。1週間以上動いていない案件を抜き出し、次アクションと期日を入れ直す
- 失注した案件の理由を一言記録する
3の「止まっている商談」が、実務では一番効きます。新規開拓に意識が向いている間に、提案済みの案件が静かに冷えていくからです。放置しない仕組みは見込み客の追客のやり方で扱っています。
4の失注理由は、その場では価値が見えませんが、3ヶ月分たまると「価格で負けているのか、提案時期が遅いのか」が見えてきます。記録の粒度は失注分析のやり方を参考にしてください。商談の確度から月別の見込みまで出したい場合は、受託の売上予測のやり方の手順がそのまま使えます。
まず手元のスプレッドシートで自動集計したい場合は、営業KPIダッシュボードをスプレッドシートで作るで、活動ログと商談の2枚からCOUNTIFS・SUMIFS・QUERYだけで3つのKPIを出す手順を書いています。
記録した数字を毎回集計し直すのが負担なら、SFAをAIにつなぐMCP連携のように、集計をAIに任せて自然文で聞く方法もあります。
KPIが機能しないときによくある3つの原因
指標を決めたのに使われなくなるケースには、だいたい共通の原因があります。
指標が多すぎる。 架電数・メール数・返信率・面談数・提案数・受注率・単価……と並べた結果、集計に30分かかるようになり、忙しい週から更新が止まります。3つで足りないと感じたら、増やす前に「増やした指標を見て何を変えるのか」を先に決めてください。答えが出ないなら、その指標は不要です。
結果指標しか見ていない。 受注件数や売上だけを追っていると、未達に気づくのが月末になります。行動量という先行指標をセットで置くことで、月半ばに軌道修正できます。
入力場所がバラバラ。 架電はスプレッドシート、商談はホワイトボード、粗利は会計ソフト。集計のたびに3か所を突き合わせることになり、これが更新が止まる大きな原因になります。KPIを続けるコツは、意志の強さではなく、日々の業務の記録がそのまま集計になる状態を作ることです。
KPIを毎週集計する手間をどう減らすか
ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っているPipeliaは、営業リスト→商談→受注→案件→外注→粗利が一本につながった受託事業者向けのSFA/CRMです。架電・メール・フォーム営業の記録が行動量に、カンバンの商談が商談数に、案件別に自動計算される売上−外注費が粗利にそのままなるので、週次の振り返りのために集計し直す必要がありません。

よくある質問
営業KPIは何個くらいが適切ですか?
営業専任がいない1〜数名のチームなら、行動量・商談数・粗利の3つで十分です。指標を増やすほど集計に時間がかかり、忙しい週に更新が止まります。増やしたくなったら「その数字を見て何を変えるのか」を先に決め、答えが出るものだけ追加してください。
受注件数が少なくて受注率がぶれる場合はどうすればいいですか?
月に数件しか受注がない規模だと、受注率は毎月大きく振れます。この場合は月単位ではなく、直近6ヶ月や12ヶ月の累計で受注率を出してください。判断に使うのは平均値のほうです。あわせて、月ごとの上下ではなく行動量が計画どおり積み上がっているかを見るようにすると、ぶれに振り回されずに済みます。
スプレッドシートでKPI管理を続けるのは無理ですか?
無理ではありません。1人で、扱う件数も限られているうちは十分回ります。限界が近いサインは、集計のために複数のシートやツールを突き合わせている、担当者以外がシートの見方を分からない、更新が2週間以上止まった、といった状態です。判断の目安は営業リスト管理はスプレッドシートで十分かにまとめています。
