納品も請求も終わったのに、その顧客からの次の話が来ない。半年後にサイトを覗いたらリニューアルされていて、「実はあのあと別のところに頼んでしまって」と後から聞かされる。受託をやっていると、この取りこぼしが一番もったいない、という声をよく聞きます。
結論から言うと、リピート受注は「思い出せるかどうか」ではなく仕組みで増やせます。やることは3つです。(1) 案件を閉じるときに次回の連絡日を必ず決める、(2) 顧客ごとに「前回いくらで何をやったか」を1画面で引ける状態にする、(3) 期日が来たら勝手に目の前に出てくる場所に置く。この3つが揃うと、記憶や気合いに頼らずに追加提案のタイミングを拾えるようになります。
リピート受注とは、一度取引した既存顧客から再び発注を受けることです。相手はすでにこちらの品質と進め方を知っているため、新規開拓に比べて提案から受注までの工程が短く、要件のすり合わせややり取りの手間も少なく済むのが特徴です。
なぜリピート受注は「勝手に」は起きないのか
理由はシンプルで、納品の瞬間に顧客との接点が切れるからです。制作期間中は週に何度もやり取りしていた相手と、検収が終わった翌週から一切連絡しなくなる。これは受託の構造上ほぼ必ず起きます。
そして厄介なことに、顧客側で「次」が発生するのは、たいてい納品から数ヶ月後です。追加ページが必要になった、キャンペーンでLPを作りたい、保守契約の更新時期が来た——そのタイミングでこちらから何も接触していなければ、顧客は「そういえば誰に頼もう」と考えます。ここで思い出してもらえなければ、相見積もりの土俵にすら上がりません。
もう一つ、1〜数名のチームでよくあるのが手が空いていない時期に商談が来ないという問題です。稼働が埋まっている間は営業をしないので、案件が切れた瞬間に「今すぐ受けられる仕事」を探し始める。既存顧客への打診は本来その1〜2ヶ月前に済ませておくべきものですが、余裕がない時期ほど手が回りません。だからこそ、判断を都度の記憶に任せず、期日で自動的に浮き上がる形にしておく必要があります。
リピート受注を増やす3ステップ
1. 案件を閉じるときに「次回連絡日」を決める
一番効くのはこれです。検収・請求が終わったタイミングで、その顧客に次にこちらから連絡する日を必ず1つ決めて記録する。内容が決まっていなくても構いません。「3ヶ月後に運用状況のヒアリング」程度で十分です。
ポイントは、案件を閉じる作業と次回連絡日の設定をセットにすることです。別々の作業にすると、忙しい時期に後者だけ抜けます。
2. 前回の内容と金額を1画面で引けるようにする
半年後に連絡するとき、「前回いくらでどこまでやったか」がすぐ出てこないと、打診のハードルが上がります。最低限、次の項目は顧客に紐づけて残しておきます。
- 前回の案件名・納品時期
- 受注金額と、実際の粗利(粗利管理のはじめ方で触れた案件別の粗利)
- 対応範囲と、見送りになった要望
- 先方の担当者名と、決裁が誰だったか
特に効くのが「見送りになった要望」です。予算やスケジュールの都合で今回は外した機能は、次の提案のいちばん自然な入り口になります。「前回見送ったスマホ最適化の件、そろそろいかがですか」は売り込みではなく続きの話として受け取ってもらえます。
3. 期日が来たら勝手に表示される場所に置く
カレンダーのリマインダーでも構いませんが、通知は流れます。おすすめは普段から毎日開く画面に「今日連絡すべき相手」が出る形にすることです。営業リストと同じ場所に既存顧客も置き、次回連絡日を過ぎたら上に来るようにしておけば、思い出す努力が要らなくなります。
追加提案のきっかけになる出来事
「用がないのに連絡しづらい」という声もよく聞きます。実際には、受託の仕事には定期的に発生するきっかけがあります。これを顧客ごとにメモしておくと、連絡の口実に困りません。
| きっかけ | 目安の時期 | 打診の切り口 |
|---|---|---|
| 見送りになった要望 | 納品後3〜6ヶ月 | 「前回外した◯◯、そろそろ着手しませんか」 |
| 保守・ドメイン・SSLの更新 | 契約に応じて毎年 | 更新確認とあわせて改善提案 |
| 繁忙期・キャンペーン時期 | 業種ごとに毎年同時期 | 「今年も◯月の施策、準備はいかがですか」 |
| 先方の担当者・体制の変更 | 不定期 | 引き継ぎ資料の提供と挨拶 |
| 使っている技術・プラグインの更新 | 不定期 | 動作確認と改修の提案 |
| 自社の新しい対応領域 | 増えたとき | 過去顧客に一斉に案内 |
表の下2つは、記録さえあればまとめて動けるのが利点です。過去顧客の一覧を条件で絞れる状態にしておけば、新しく対応できるようになった領域の案内を、該当しそうな顧客だけに送れます。
既存顧客リストは新規リストと分けるべきか
分けなくて構いません。というより、同じリストで「ステータスだけ違う」形にしたほうが運用が続きます。
リストを分けると、日々見る画面が2つになり、片方が更新されなくなります。1〜数名のチームでは、見る場所が増えるほど形骸化が早く進みます。営業リスト管理はスプレッドシートで十分かでも書いたとおり、管理対象を増やすより「毎日開く1画面に集約する」ほうが結果的に回ります。
新規と既存で変えるべきなのは、リストの置き場所ではなく優先度の付け方です。既存顧客は着地率が高く提案工数も小さいので、同じ日に連絡先が並んだら既存を先に処理する。この順番だけ決めておけば十分です。
リピート受注が増えているかをどう見るか
施策の効果は感覚では分かりません。次の2つを月次で見ると判断できます。
- 既存顧客からの受注が全受注に占める割合 — 母数が小さいうちは月ごとの振れが大きいので、四半期でならして見ます
- 前回納品からの経過月数 — 同じ顧客からの受注間隔が縮まっているかどうか。仕組みが効いていれば、この数字が短くなっていきます
業界平均のような外部の数値を目標にする必要はありません。自社の去年の同じ期間と比べるのが一番実態に合います。あわせて案件別の粗利も見ておくと、「リピートは多いが利益が薄い顧客」に気づけます。値付けの考え方は見積もりの作り方にまとめています。
ここからは自社製品の紹介です
ここまでの仕組みは、スプレッドシートとカレンダーの組み合わせでも作れます。ただし「案件を閉じる」「次回連絡日を書く」「顧客の履歴を引く」が別々のファイルに分かれていると、忙しい時期に必ずどこかが抜けます。私たちが作っているPipeliaは、そこを1本につないだ受託事業者向けのSFA/CRMです。
営業リストには再連絡アラートがあり、次回連絡日を過ぎた相手が優先スコアとあわせて上に表示されます。新規開拓の相手も、納品済みの既存顧客も同じ画面に並ぶので、「今日誰に連絡するか」を1画面で決められます。

ダッシュボードには「今日の要対応」がまとまり、再連絡の期日が来た顧客と、回収遅延などの他の対応事項が同じ場所に出ます。朝いちばんにここだけ見れば、その日の連絡先が決まります。

過去の取引内容は案件として残り、受注金額と外注費から案件別の粗利が自動計算されます。次の提案をする前に「前回この顧客でいくら残ったか」を確認できるので、値付けを前回に引きずられずに決められます。粗利率が20%を下回った案件には警告が出るため、リピートしていても利益が薄い相手にも気づけます。

商談はカンバンで管理し、受注すると案件が自動で作られます。既存顧客への追加提案も新規商談と同じ流れに乗るので、打診したまま止まっている話が見えなくなることがありません(商談管理はエクセルで限界?)。
実際の画面はデモ環境で触れます。登録もメールアドレスも不要で、開けばそのままデータの入った状態で確認できます。
よくある質問
リピート受注は全体の何割を目標にすべきですか
一律の正解はありません。制作の単価や案件の性質によって適正な比率は変わりますし、外部の平均値を目標にしても自社の実態とはズレます。まずは直近1年の受注を「新規/既存」で分けて自社の現状値を出し、その数字を基準に翌年を見るのが確実です。既存の比率が高すぎる場合は新規開拓が止まっているサインでもあるので、増やす方向だけが正解とは限りません。
用がないのに連絡すると売り込みに見えませんか
前回の案件で見送りになった要望や、保守・更新の時期といった相手側の事情に紐づいた話であれば、営業ではなく続きの相談として受け取られやすくなります。逆に、こちらの都合だけで「何かお仕事はありませんか」と聞くと売り込みになります。連絡の口実は、案件を閉じるときに一緒に記録しておくのが確実です。
顧客管理はスプレッドシートではだめですか
顧客数が少ないうちは十分に機能します。判断の目安は、「次回連絡日を過ぎた顧客をすぐ一覧できるか」「前回の受注金額と粗利をその場で出せるか」の2点です。この2つに毎回ファイルを開き直す手間がかかっているなら、案件・粗利と顧客情報が同じ場所にあるツールに移す時期です。移行の見極め方は受託事業者のSFAの選び方にまとめています。
