既存顧客からの相談だけで回っていたのに、ある月を境に急に予定表が空いてくる。受託事業でこわいのは、この「気づいたら暇になっていた」という瞬間です。そして新規開拓に着手するのはたいてい暇になってからで、そのときにはもう、今月・来月の売上には間に合いません。
結論から書きます。受託の新規開拓は、リピート・紹介・フォーム営業・営業メール・電話の5つのチャネルに整理し、「早く効くもの」と「あとから効くもの」を並行して回すのが現実的です。1〜数名のチームで5つ全部を同時に始めるのは手が足りないので、最初の90日は「既存顧客への声かけ(早く効く)」+「新規チャネルを1つだけ(あとから効く)」の2本立てに絞ります。
もうひとつ大事なのは、チャネルを増やすことより先に、接触した相手を1か所に記録し、次にいつ連絡するかを決めておくことです。新規開拓が続かない原因の多くは、リストの件数ではなく、一度接触した相手を追いかけ続ける仕組みがないことにあります。
この記事の要点
- 1〜30日目は過去2〜3年の取引先を棚卸しして、半年以上連絡していない相手に声をかける(リピート・紹介が早く効く)
- 31〜60日目は50〜100件のリストを作り、新規チャネルを1つだけ、週20件など決めた量で回す
- 61〜90日目に接触・返信・商談の件数を数え、3ヶ月続けて商談ゼロならチャネルを入れ替える

新規開拓とは何か——受託事業における定義
新規開拓とは、まだ取引のない相手に自分から接触し、案件の相談を受けられる関係をつくる営業活動です。既存顧客からの追加依頼(リピート)と対になる考え方で、受託事業では「今の売上を守る活動」と「来期の売上をつくる活動」のうち、後者にあたります。
受託事業の新規開拓には、他の業種と違う特徴が3つあります。
- 1件が大きく、件数が少ない。月に何十件も受注する商売ではないため、1件の失注が売上計画にそのまま響きます
- 納品中は営業が止まる。手を動かすのが自分なので、忙しい時期に開拓が止まり、暇になってから慌てて動くサイクルに陥りやすい
- リードタイムが長い。最初の接触から受注まで数週間〜数ヶ月かかることがあり、今月動いた分の結果が出るのは数ヶ月先です
この3つがあるため、「暇になってから開拓する」やり方では売上の谷を埋められません。忙しい時期にも、量を落としてでも開拓を止めないことが前提になります。
受託の新規開拓に使える5つのチャネル
受託事業者が現実的に使えるチャネルは、次の5つに整理できます。「効果が出るまでの時間」と「1件あたりの手間」で並べると、使い分けの判断がしやすくなります。
| チャネル | 効果が出るまで | 1件あたりの手間 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| リピート(既存顧客の追加案件) | 早い | 小さい | 今月・来月の売上が足りない |
| 紹介(顧客・協力会社から) | 中くらい | 小さい | 実績はあるが接点が足りない |
| 電話(架電) | 早い | 大きい | 反応を短期で確かめたい |
| フォーム営業 | 中くらい | 中くらい | ターゲット業種を絞り込めている |
| 営業メール(差し込み一括送信) | 中くらい | 中くらい | 送り先の担当者情報を集められる |
それぞれの具体的なやり方は、リピート受注を増やす方法、紹介営業のやり方、電話営業のリスト管理とKPI、フォーム営業のやり方、営業メールの差し込み一括送信で個別に扱っています。
この5つはどれも自分から接触するチャネルですが、サイトの問い合わせフォームも受注の入口です。届いた相談を取りこぼさずに追える形にする作り方は、Googleフォームで問い合わせを案件化するで紹介しています。
「早い」チャネルだけを回すと、既存顧客を消費し尽くしたところで止まります。逆に「あとから効く」チャネルだけだと、結果が出る前に資金が持ちません。両方を並べるのは、そのためです。
交流会や展示会で集めた名刺をリストとして使える形にする手順は、名刺を営業リストに変える方法にまとめています。
どのチャネルから始めるか——3つの判断基準
1. いつまでに売上が必要か
今月・来月の入金を埋めたいなら、新規チャネルではなくリピートと紹介が先です。すでに信頼がある相手なので、話が早く、単価も守りやすい。半年先の売上をつくりたいなら、フォーム営業や営業メールのように「数を当てて反応を探る」チャネルに時間を使えます。
資金の余裕がどれくらいあるかで、選べるチャネルは変わります。判断の前に資金繰り管理で入金予定を見ておくと、「どこまで待てるか」がはっきりします。
2. ターゲットを名指しできるか
「Web制作をしていそうな会社」ではなく、「〇〇業界で自社サイトを3年以上更新していない、従業員20〜50名の会社」まで絞れているかどうかです。名指しできるならフォーム営業や営業メールが機能します。まだ絞れていないなら、リストを作る前に、直近に受注した案件を振り返って共通点を洗い出すほうが先です。
絞り込みの手順は営業リストの作り方で解説しています。
3. 自分が続けられる形か
電話が苦手な人が架電を主軸に置くと、たいてい2週間で止まります。反応率が高くても、続かないチャネルは合計の成果がゼロに近づきます。「自分が毎週30分でも手を動かせるか」で選ぶほうが、教科書的な最適解より成果が出ます。
最初の90日の進め方
1〜数名のチームが新規開拓をゼロから立ち上げる場合、90日を3つの区切りで進めます。
1〜30日目:既存顧客の棚卸しと、ターゲットの定義
- 過去2〜3年の取引先をすべて書き出し、最後に連絡した日を入れる
- 半年以上連絡していない相手に、近況伺いの連絡をする(提案ではなく、まず接触)
- 直近で受注できた案件の共通点(業種・規模・きっかけ・予算感)を3つ書き出す
- その共通点を、新規チャネルで狙うターゲットの定義にする
この30日は、新規チャネルを立ち上げる準備期間であると同時に、リピートを掘り起こす期間でもあります。早く効くのはここです。
31〜60日目:新規チャネルを1つだけ動かす
- 定義したターゲットに合う先を50〜100件集めて、営業リストにする
- 選んだチャネル1つで、週ごとに決めた件数を接触する(例:週20件)
- 接触したらその場で「返信あり/不在/断り」と次に連絡する日を記録する
- 断られた相手も消さない。理由(時期・予算・既存の取引先)を残しておく
ここで2つ以上のチャネルを同時に始めないことが大事です。反応がなかったときに、原因がリストなのか文面なのかチャネルなのか、切り分けられなくなります。
61〜90日目:数字を見て、続けるか変えるかを決める
- 接触件数・返信件数・商談件数を数える
- 返信がないなら文面とターゲット定義を、返信はあるが商談にならないなら提案内容を見直す
- 3ヶ月続けて商談がゼロなら、チャネルそのものを入れ替える
受注件数だけを見ると判断が遅れます。見るべき指標の選び方は営業KPIの決め方が参考になります。
新規開拓が続かない3つの原因
忙しい時期に完全に止まってしまう
納品に追われると開拓はゼロになりがちです。リードタイムが数ヶ月ある以上、止めた分の空白は数ヶ月後の売上の谷になって返ってきます。忙しい月は「週5件だけ接触する」など、量を落として続ける形にしておくと谷が浅くなります。
接触したまま放置している
「今は予算がない」と言われた相手を、そのままリストの底に沈めてしまうケースです。受託の相談は相手の事情(予算期・担当者の異動・既存業者との契約更新)で動くので、時期が変われば話が変わります。次の連絡日を決めて記録しておくだけで、拾える案件が増えます。詳しくは見込み客の追客のやり方へ。
チャネルを増やしすぎる
反応が出ないと、別のチャネルを足したくなります。ただ1人〜数名の体制では、増やすほど1つあたりの実行量が減り、どれも中途半端になります。まず1つを「反応が測れる量」までやり切ってから、次を足す順番のほうが結果が出ます。
チャネルが増えても、記録は1か所にまとめる
電話はスプレッドシート、メールは送信ツール、紹介は個人の記憶——とバラバラになると、「同じ会社に別チャネルから重ねて接触してしまう」「誰にいつ連絡したか分からない」という事故が起きます。チャネルは分かれていても、相手ごとの接触履歴と次の連絡日は1か所に集める、というのが最低ラインです。

記録する項目は多くなくて構いません。会社名・担当者・チャネル・最終接触日・状況・次の連絡日の6つがあれば、追客は回ります。
5つのチャネルを1つの営業リストで回す
ここからは自社製品の紹介です。Pipeliaは受託事業者向けのSFA/CRMで、営業リストの上から架電・フォーム営業・差し込みメールの一括送信(開封・返信のトラッキングはProプラン)を実行でき、接触履歴が相手ごとに残ります。優先スコアと再連絡アラートで次に連絡する相手が上に並び、反応があった相手はそのまま商談のカンバンへ移せます。受注すると案件が自動で作られるので、新規開拓で集めた相手を別のツールに入力し直す必要がありません。
よくある質問
新規開拓には、月にどれくらい時間をかければいいですか?
「毎週決まった曜日に、決まった時間だけ」という形にするのが続けやすい方法です。時間の長さより、忙しい月にもゼロにしないことのほうが効きます。納品が重なる月は量を落とし、余裕のある月に取り戻す前提でスケジュールを組んでおくと、開拓が完全に止まる期間をなくせます。
営業リストは何件くらい必要ですか?
自社の反応率が分かるまでは、必要件数を先に決められません。まず50〜100件など区切りのよい数で1周し、接触件数に対してどれだけ返信・商談が生まれたかを測ります。その実測値が出てから、必要な受注件数から逆算して次のリスト件数を決めるのが、無駄の少ない進め方です。
反応がまったくないときは、何から見直せばいいですか?
見直す順番は、①ターゲットの定義 ②文面(誰の何を解決するのかが1行目にあるか) ③チャネル、の順です。多いのは①で、「制作会社全般」のように広く取りすぎていて、相手が自分ごとに感じられないケースです。断られた相手の理由を記録しておくと、どこがずれているかの手がかりになります。断りの理由の残し方は失注分析のやり方で扱っています。
