外注先から請求書が届いて、はじめて「この発注、いくらで出していたっけ」とメールを遡る。月末に支払いを済ませたつもりが、1件だけ振込が漏れていて催促の連絡が来る。受託で外注を使い始めると、こうした小さな事故が月に1回は起きます。原因は注意力ではなく、発注の金額・納期・支払が別々の場所に書かれていることです。

発注管理表とは、外注先への発注を1件1行にして、発注金額・納期・納品・支払予定・支払状況を同じ行で追えるようにした台帳です。結論を先に書きます。支払予定日は手で入れず、納品日と支払条件から数式で出してください。 そして、案件ごとの外注費はこの台帳から集計して、案件側では入力しないことです。同じ金額を2か所に書いた時点で、どちらかが必ず古くなります。

この記事では、Googleスプレッドシートでそのまま作れる12列の設計と、支払予定日・未払い合計・案件別外注費を出す数式、支払遅れを色で拾う条件付き書式、月末の回し方までを書きます。エクセルでも同じ数式で動きます。

この記事の要点

  • 発注管理表は1発注1行。手で入れるのは発注時と納品時の数か所だけにする
  • 支払予定日は「納品日+支払条件」から数式で出す。手入力にすると、入れ忘れた行が遅延として浮かばなくなる
  • 案件別の外注費は発注台帳から SUMIF で集計する。粗利の計算はそこから自動でつながる
発注管理表の流れを示した図。発注を1行入れて納品日を入れると支払予定日が数式で決まり、そこから月別の支払予定・支払遅れの表示・未払い合計に分かれる。発注金額は案件別の外注費として集計され、案件の粗利につながることが確認できる

発注管理表に置く12列

シート名を「発注台帳」にして、1行目を見出しにします。左から、発注の情報・日付・金額・支払の4ブロックで並べます。

列見出し入力例種類
A発注番号PO-2026-014手入力(連番)
B案件名コーポレートサイト制作プルダウン(案件シートから)
C外注先フリーランスA(コーディング)プルダウン
D作業内容下層10ページのコーディング手入力
E発注日2026/10/01手入力
F納期2026/10/20手入力
G発注金額(税抜)180,000手入力
H納品日2026/10/18納品・検収したら入れる
I支払条件翌月末プルダウン
J支払予定日2026/11/30数式
K支払状況未払いプルダウン(未払い/支払予定/支払済)
L支払日2026/11/28振り込んだら入れる

B列の案件名は、案件を管理しているシートの案件名列を参照するプルダウン(データの入力規則→「範囲内のリスト」)にします。自由入力にすると「コーポレートサイト制作」と「コーポサイト制作」が混ざり、後で出てくる SUMIF が合わなくなります。案件側のシートの作り方は案件管理のスプレッドシートテンプレートに書いています。

K列の支払状況は3値に絞ります。「請求書待ち」「確認中」などを足したくなりますが、状態が増えるほど更新が止まり、どれが本当か分からない台帳になります。請求書が届いたかどうかを残したい場合は、状態を増やすのではなく、別に「請求書受領日」の列を1本足すほうが壊れにくいです。

支払予定日を数式で自動計算する

H列(納品日)を入れたら、J列(支払予定日)が自動で埋まる形にします。支払条件が「当月末/翌月末/翌々月末」の3種類なら、J2に次の式を入れて下までコピーします。

=IF(H2="","",IF(I2="当月末",EOMONTH(H2,0),IF(I2="翌月末",EOMONTH(H2,1),EOMONTH(H2,2))))

EOMONTH は「基準日から数えて○か月後の月末日」を返す関数です。納品日が10月18日で翌月末払いなら、11月30日になります。まだ納品されていない行は空欄のままにしておき、支払予定が先走って計上されないようにしています。

外注先から「20日締め翌月末払い」のように締め日を指定されている場合は、その外注先だけ I 列の選択肢を増やし、式に分岐を1つ足します。大事なのは、納品日を入れる以外に手を動かさなくても支払予定日が決まることです。発注時に支払条件を決めておくこと自体は外注管理の方法で整理しています。

支払遅れと納期遅れを条件付き書式で拾う

目視のチェックは長続きしません。範囲 A2:L に「カスタム数式」で次の3つのルールを入れておきます。

  1. 支払遅れ:=AND($K2<>"支払済",$J2<>"",TODAY()>$J2) で背景を赤。支払予定日を過ぎても支払済になっていない行が浮かびます
  2. 今週の支払い:=AND($K2<>"支払済",$J2<>"",$J2>=TODAY(),$J2-TODAY()<=7) で背景を黄色。7日以内に払う行が分かります
  3. 納期遅れ:=AND($H2="",$F2<>"",TODAY()>$F2) で文字をオレンジ。納期を過ぎても納品日が入っていない行です

ルールは上から順に評価されるので、赤を一番上に置きます。これで、台帳を開くだけで「今月払うもの」と「催促すべき納品」が色で分かる状態になります。

未払い合計と月別の支払予定を集計する

台帳の上か別シートに、次の集計を置きます。

知りたいこと数式
未払い合計(税抜)=SUMIFS(発注台帳!G:G,発注台帳!K:K,"<>支払済",発注台帳!A:A,"<>")
今月の支払予定=SUMIFS(発注台帳!G:G,発注台帳!J:J,">="&EOMONTH(TODAY(),-1)+1,発注台帳!J:J,"<="&EOMONTH(TODAY(),0),発注台帳!K:K,"<>支払済")
支払遅れの件数=COUNTIFS(発注台帳!K:K,"<>支払済",発注台帳!J:J,"<"&TODAY())

未払い合計の式で A列が空でないことを条件にしているのは、見出し行や空行を拾わないためです。月別の支払予定は、月初の日付を左端の列に並べて「今月」の部分をその日付に置き換えれば、12か月分の表になります。これを入金予定と並べたものが資金繰り表で、列の設計はスプレッドシートの資金繰り表の作り方にまとめています。

金額を税抜で持っているのは、粗利の計算を税抜でそろえるためです。振込額を確認したいときは、集計結果に消費税分を掛けて見てください。また、個人の外注先へのデザイン料や原稿料などは、支払う側で源泉徴収が必要になる場合があります。対象になる報酬の範囲は国税庁のNo.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とはで確認できます(2026年9月時点)。

案件別の外注費を集計して粗利につなげる

発注管理表をわざわざ作るいちばんの理由はここです。案件シートに「外注費」の列を作り、手入力ではなく発注台帳から集計します。案件シートの A列が案件名なら、次の式です。

=SUMIF(発注台帳!B:B,A2,発注台帳!G:G)

これで、案件の途中で追加発注が出ても、発注台帳に1行足すだけで案件の外注費が更新されます。粗利は「売上 − 外注費」、粗利率は「粗利 ÷ 売上」で、案件シートの隣の列に置けば完成です。

外注費を案件側で手入力していると、追加発注を入れ忘れた案件だけ粗利が良く見えます。いちばん利益が削られている案件ほど数字の上では健全に見える、というのが手入力の怖いところです。粗利管理表の側の作り方はエクセルで粗利管理表を作る、外注比率ごとの粗利率の目安はWeb制作の粗利率の目安に書いています。

月末の回し方

台帳ができたら、月末の作業は次の3つになります。

  1. 赤と黄色の行を払う。振り込んだら L列に支払日を入れ、K列を「支払済」にする
  2. 請求書が届いた行の金額を確認する。発注金額(G列)と請求額が違う場合は、先に理由を確認してから払う。仕様追加で増えたなら、G列を直すのではなく追加発注として1行足す
  3. オレンジの行(納期遅れ)に連絡する。納品日を入れ忘れているだけのことも多いので、まず自分の記録を確認する

2の「追加発注は別の行にする」が地味に効きます。元の発注金額を書き換えると、当初いくらで頼んで、どこで増えたのかが後から追えなくなり、次の見積もりに活かせません。

この表で足りなくなるタイミング

1人〜数名で、発注が月に10〜20件程度なら、この台帳で問題なく回ります。回っているうちは乗り換える必要はありません。同じことを Notion のデータベースで組む場合はNotionで外注・発注を管理するを参考にしてください。

苦しくなるのは、外注先とのやり取り(発注書の送付、進捗の確認、支払の連絡)がメールに散らばり、台帳の更新がそれに追いつかなくなったときです。ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っている Pipelia では、発注ごとの外注費・進捗・支払状況を管理し、案件の粗利に自動で反映します。外注先も Pipelia を使っていれば、発注がそのまま相手の受注として届きます。

Pipeliaの発注管理画面。発注ごとの外注費・進捗・支払状況(未払い/支払予定/支払済)が一覧になり、未払い合計が確認できる

外注先ごとの支払条件・登録番号・発注実績をまとめる台帳の作り方は外注先リストをスプレッドシートで作るにまとめています。

個人の外注先へのデザイン料などから源泉徴収する場合に、この発注台帳へ税額・振込額・納付期限の列を足す方法は外注費の源泉徴収をスプレッドシートで計算するにまとめています。

よくある質問

発注書の作成もこのスプレッドシートでできますか?

できますが、台帳と発注書は分けて考えるのがおすすめです。台帳は「管理」、発注書は「相手に渡す書類」です。発注書は見積書のテンプレートを流用して作り、ファイル名を台帳の発注番号にそろえておけば、あとから探すときに台帳から1回でたどれます。書類ごとの役割の違いは見積書・発注書・納品書・請求書の違いで整理しています。

外注先ごとに支払条件が違う場合はどうすればいいですか?

外注先シートを別に作り、外注先名と支払条件を1行ずつ並べておき、発注台帳の I列を VLOOKUP で引く形にすると入力の手間が減ります。発注ごとに条件が変わる取引先だけ手で上書きし、上書きした行は色を変えておくと、数式の行と区別がついて安全です。

発注管理表はスプレッドシートとエクセルのどちらで作るのがいいですか?

この記事の数式はどちらでも動くので、普段使っている方で構いません。複数人で同時に更新するならGoogleスプレッドシート、1人で扱っていて社外に出さないならエクセルでも困りません。迷う場合は、案件管理や資金繰り表をすでに置いている側に合わせると、シートをまたいだ集計がしやすくなります。