期の初めに「今年は売上〇〇万円」と目標を決めても、9月や10月になって「いま目標に対してどこにいるのか」を聞かれると、すぐには答えられない。通帳と請求書の控えを見返して足し算をし、たぶん少し足りない、という感触だけが残る。受託の仕事は月ごとの波が大きいので、年間の数字だけを持っていても、足りない月に気づくのが遅れます。

予実管理とは、月ごとに立てた予算(目標)と実績を並べ、その差と理由を確認して次の打ち手を決める管理のことです。結論を先に書きます。Googleスプレッドシートで作るなら、シートは「予算」「案件」「予実」の3枚にして、手で入力するのは予算と案件の2枚だけにしてください。予実シートは、案件シートの売上と外注費を計上月ごとに SUMIFS で集めるだけにします。さらに、まだ決まっていない商談の金額に確度を掛けた「見込み」を足すと、今期の着地がどこになりそうかまで1枚で見えます。

この記事では、3枚のシートの列設計と、コピーしてそのまま使える数式、予算を下回った月を赤くする条件付き書式、月初に15分で回す見直しの手順を書きます。

この記事の要点

  • 手で入れるのは「予算」と「案件」の2枚だけ。予実シートは SUMIFS で計上月ごとに集計し、数字を手で書かない
  • 予算は年間目標を前年同月の実績の比率で月に配分する。前年の実績がなければ12等分から始める
  • 実績に「見込み金額×確度」を足した着地見込みを並べ、達成率90%未満の月を条件付き書式で赤くする
予実管理表の数字の流れを示した図。予算シート(年間目標を月に配分)と案件シートの確定分(計上月・売上・外注費)から予実の差異と達成率が出て、案件シートの見込み分(金額×確度)を足して着地見込みが出ることが確認できる

予実管理表に載せる数字は売上と粗利の2つ

受託の予実管理で追う数字は、売上と粗利の2つで足ります。売上だけを追うと、外注に多く出した案件で売上目標を達成しても手元に残らない、ということが起きます。外注比率によって粗利率がどれくらい変わるかはWeb制作の粗利率の目安で計算しています。

数字中身何を判断するか
売上の予実月の売上予算と、確定した売上の差仕事の量が足りているか
粗利の予実月の粗利予算と、売上−外注費の差手元に残る額が足りているか
着地見込み実績+まだ決まっていない商談の金額×確度今期の終わりにどこへ着きそうか

経費や人件費まで含めた損益の予実は、会計ソフトの試算表で見るほうが確実です。この記事の表は、営業と案件の側から「仕事の量と粗利が予定どおりか」を月単位で見るためのものに絞っています。

予算シートで年間目標を月に配分する

1枚目を「予算」シートにします。年間目標を入れると、月ごとの売上予算と粗利予算が数式で出る形にします。

セル内容入力・数式
G1年間の売上目標手入力(例:12,000,000)
G2目標とする粗利率手入力(例:0.5)
A2〜A13月期首の月の1日を入れる(例:2026/4/1〜2027/3/1)
B2〜B13前年同月の売上実績手入力
C2配分比=IFERROR(B2/SUM($B$2:$B$13),1/12)
D2売上予算=$G$1*C2
E2粗利予算=D2*$G$2

C2〜E2を13行目までコピーします。年間目標を12等分すると、毎年仕事が少ない月が必ず「未達」になり、表を見るたびに気分が沈むだけで判断の材料になりません。前年同月の実績の比率で配分しておけば、例年少ない月は予算も小さくなり、差異が「今年だけの変化」を表すようになります。

C2の IFERROR は、前年の実績欄が空で合計が0のときに12等分へ切り替えるためのものです。IFERROR は、1番目の引数がエラー値でなければそれを返し、エラー値なら2番目の引数を返す関数です(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「IFERROR 関数」、2026年10月5日確認)。開業1年目や前年の記録がない場合は、B列を空のまま使い始めて、翌年から実績を入れてください。

案件シートは1行1案件で、計上月と状態を持たせる

2枚目を「案件」シートにします。1行に1案件を書き、決まった案件もまだ商談中の案件も同じ表に並べます。

列項目入れ方
A案件名「会社名/案件名」で統一
B顧客会社名
C計上日売上を立てる日(請求日にそろえる)
D売上(税抜)金額
E外注費(税抜)その案件で外注に払う額
F状態確定/見込み/失注(プルダウン)
G確度見込みのときだけ 0.3 のように入れる
H計上月数式
I加重売上数式
J加重粗利数式

H〜J列は2行目に次の式を入れて、下までコピーします。

H2: =IF(C2="","",EOMONTH(C2,-1)+1)
I2: =IF(F2="見込み",D2*G2,0)
J2: =IF(F2="見込み",(D2-E2)*G2,0)

H列は計上日をその月の1日にそろえる列です。EOMONTH は、起算日から指定した月数だけ前または後ろの月の最終日を返す関数です(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「EOMONTH」、2026年10月5日確認)。前月の末日を出して1日足すと、10月15日でも10月31日でも「2026/10/1」になり、予算シートのA列と同じ値で突き合わせられます。

計上日を納品日にするか請求日にするかは、どちらでも構いません。大事なのは全案件で同じ決め方にすることです。請求日にそろえておくと、請求管理のスプレッドシートテンプレートの台帳と数字が一致するので、月末に突き合わせるのが楽になります。なお、ここでの計上日は社内で予実を見るための決め方です。会計上の売上をいつ計上するかは、顧問の税理士や会計ソフトの設定に合わせてください。

F列は「データ」→「データの入力規則」でプルダウンにします。「確定」と「受注」が混ざると SUMIFS が拾わなくなるので、表記ゆれは最初に防いでおきます。案件の列をもっと持たせたい場合は、案件管理のスプレッドシートテンプレートの列設計にこの3列(状態・確度・計上月)を足す形でも作れます。

予実シートは SUMIFS だけで売上と粗利の実績を出す

3枚目を「予実」シートにします。A2〜A13は予算シートの月をそのまま参照し(=予算!A2)、B列から右を数式で埋めます。

列項目2行目の数式
B売上予算=予算!D2
C売上実績=SUMIFS(案件!$D:$D,案件!$H:$H,$A2,案件!$F:$F,"確定")
D売上の差異=C2-B2
E売上の達成率=IFERROR(C2/B2,"")
F粗利予算=予算!E2
G粗利実績=C2-SUMIFS(案件!$E:$E,案件!$H:$H,$A2,案件!$F:$F,"確定")
H粗利率=IFERROR(G2/C2,"")
I見込み(加重売上)=SUMIFS(案件!$I:$I,案件!$H:$H,$A2)
J着地見込み=C2+I2
K着地の達成率=IFERROR(J2/B2,"")
L差異の理由手入力(1行メモ)

SUMIFS は、複数の基準に応じた範囲の合計を返す関数です(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「SUMIFS 関数」、2026年10月5日確認)。ここでは「計上月が A2 と同じ」かつ「状態が確定」の2つを条件にして、売上と外注費をそれぞれ合計しています。範囲を $D:$D のように列まるごとで書いているので、案件シートに行を足しても式を直す必要はありません。

14行目には年間の合計を置きます。B〜D列、F〜G列、I〜J列は =SUM(B2:B13) の形で合計し、達成率と粗利率の列は合計行でも同じ割り算の式(=IFERROR(C14/B14,"") など)を入れます。達成率を SUM で足すと意味のない数字になるので注意してください。

J14 の「着地見込み」の合計が、今のまま進んだら今期がどこに着きそうかの数字です。確定した案件は計上月が先でも C列に入るので、受注済みで来月以降に請求する分もここに含まれます。確度の置き方は受託の売上予測のやり方で、ステージごとに機械的に決める方法を書いています。

達成率90%未満の月を条件付き書式で赤くする

数字を並べるだけだと、どの月が危ないかを毎回目で探すことになります。条件付き書式で色を付けておきます。手順は次のとおりです(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Google スプレッドシートで条件付き書式ルールを使用する」、2026年10月5日確認)。

  1. 予実シートの E2:E13 を選択する
  2. 「表示形式」→「条件付き書式」を開く
  3. 「セルの書式設定の条件」で「カスタム数式」を選ぶ
  4. 値の欄に =AND(E2<>"",E2<0.9) と入れ、背景色を薄い赤にして「完了」を押す

同じ手順で、K2:K13(着地の達成率)には =AND(K2<>"",K2<0.9) で薄い黄色、H2:H13(粗利率)には =AND(H2<>"",H2<0.2) で薄い赤を付けておくと、「量は足りているが粗利が薄い月」も目に入ります。20%という基準は例なので、自社の粗利率の実績に合わせて変えてください。

もう1つ、案件シートにも色を付けておきます。A2:J の範囲に =AND($F2="見込み",$C2<TODAY()) を設定すると、計上日を過ぎたのにまだ「見込み」のままの行が色付きになります。決まったのか、ずれたのか、失注したのかを更新しないまま残すと、着地見込みが実態より大きく出続けるので、この色は月初に必ず消す対象にします。

月初の15分で回す予実管理表の見直し

表を作っても、見る時間を決めないと更新が止まります。月初に次の4つだけを順番にやります。

  1. 案件シートで色が付いた「見込み」の行を、確定・失注・計上日の変更のどれかに直す
  2. 予実シートで前月の売上と粗利の差異を見て、L列に理由を1行書く(「A社の公開が11月にずれた」「外注に出す範囲が増えた」など)
  3. 着地見込み(J14)と年間予算(B14)を比べる。足りない額が、残りの月の商談で埋まりそうかを確かめる
  4. 埋まりそうにない場合は、残りの月で何をするかを1つ決める

4の打ち手は、だいたい2つに分かれます。商談そのものが足りないなら受託の新規開拓の方法、既存の取引先から追加の相談を拾えていないならリピート受注を増やす方法が参考になります。L列の理由を半年分ためると、「ずれ」が多いのか「失注」が多いのか「粗利が薄い」のかが見えてきて、予算の立て方そのものも直せます。

入金のタイミングまで見たい場合は、この表の計上月に支払条件を足して入金月へずらします。その作り方はスプレッドシートの資金繰り表の作り方にまとめています。

この予実管理表で足りなくなるところ

1〜数名のチームで、案件が月に十件前後までなら、この3枚で十分に回ります。苦しくなるのは、商談の確度や外注費が別のファイルで更新されていて、案件シートへの転記が毎月発生するようになったときです。

ここからは自社製品の紹介です。Pipelia は受託事業者向けのSFA/CRMで、商談・受注・外注費が同じデータでつながっているため、案件別の粗利率と月次推移は転記なしで出ます。

Pipeliaの粗利画面。案件別の粗利率と月次推移、粗利率20%未満の案件への警告が確認できる

よくある質問

エクセルでも同じ予実管理表が作れますか?

作れます。この記事で使っている SUMIFS、EOMONTH、IFERROR、IF、SUM はエクセルにも同じ名前の関数があり、シートをまたぐ参照も「案件!$D:$D」の同じ書き方で動きます。条件付き書式は「ホーム」タブの「条件付き書式」から「新しいルール」を選び、「数式を使用して、書式設定するセルを決定」に同じ式を入れてください。

予算は売上と粗利のどちらで立てるべきですか?

両方を立てて、判断には粗利を優先するのがおすすめです。受託は外注に出す割合で手元に残る額が大きく変わるため、売上の予算を達成していても粗利が足りない月が起きます。この記事の予算シートのように、売上予算に目標の粗利率を掛けて粗利予算を出しておけば、入力の手間は増えずに2つの数字を並べて見られます。

案件が少なく、月ごとの予実が大きくぶれる場合はどうすればいいですか?

大きな案件が1件ずれるだけで達成率が0%や200%になる規模なら、月ごとの達成率より、四半期の合計と年間の着地見込みを主に見てください。予実シートの下に3ヶ月ずつ SUM した行を足すだけで作れます。月の差異はL列に理由を書くことに使い、色が付いても慌てずに「ずれ」なのか「失注」なのかを切り分けるほうが、次の打ち手を誤りません。