案件が終わったあとで「これ、結局何時間かかったんだろう」と思うのに、調べる手がかりがない。受託で見積もりの精度が上がらない原因の多くは、見積り方ではなく、実績が残っていないことにあります。

工数管理表とは、作業時間を案件と工程ごとに記録して、見積もりと実績の差を見えるようにした表です。結論を先に書くと、記録は1日1行で十分です。 日付・案件・工程・時間・区分の5つを埋めるだけのシートを作り、集計は SUMIFS で後から出します。タスク単位で秒まで記録する仕組みは、精度が上がる前に入力が止まります。

この記事では、記録シートの列設計と、そこから四つの数字(案件別工数・見積との差・請求可能時間の比率・実効時間単価)を出す数式を、そのままコピーできる形で書きます。Googleスプレッドシートでもエクセルでも同じ数式で動きます。

この記事の要点

  • 記録シートは6列、1日1行、15分単位。これ以上細かくすると続かない
  • 集計は SUMIFS だけで足りる。シートは「記録」と「集計」の2枚
  • 同じ記録から、見積の精度・間接業務の比率・実効時間単価の3つが出る
工数管理表の作り方を示した図。1日1行の記録(日付・案件・工程・時間)から案件別の合計工数を出し、見積工数との差・実効時間単価・請求可能時間の比率の3つが導かれる流れが確認できる

記録シートの列設計

シート名を「記録」として1行目を見出しにします。列は6つです。

列見出し入力例補足
A日付2026-09-21Ctrl+; で当日を入力できる
B案件○○社コーポサイトプルダウン(データの入力規則)にする
C工程デザイン見積書の項目と同じ語彙にそろえる
D時間2.515分=0.25で小数入力
E区分請求可能「請求可能」か「間接」の2値だけ
Fメモ修正2回目の対応空欄でもよい。あとで理由を思い出すための列

ポイントはE列です。営業・見積もり・請求・学習などの「どの案件にも請求できない時間」を「間接」として同じシートに記録します。この1列があるかどうかで、後半の計算がすべて変わります。案件名は案件管理のスプレッドシートテンプレートで作った案件一覧を参照先にすると、表揺れを防げます。

記録を続けるための3つの割り切り

工数管理が止まるのは、たいてい精度を求めすぎているときです。次の3つを先に決めておきます。

  1. 15分単位で丸める。実際は52分でも 1.0 と書いて構いません。月単位で見れば誤差は相殺されます
  2. 1日1行を基本にする。1日に3案件触った日だけ3行にすればよく、作業を切り替えるたびに行を増やさない
  3. その日のうちに書く。週末にまとめて思い出すと、思い出せない時間が全部「間接」に入って歪みます

この精度でも、「この案件は見積の1.5倍かかっている」という判断には十分間に合います。

集計シート:案件別の工数と見積との差

2枚目のシートを「集計」とし、A列に案件名を並べます。使う関数は SUMIFS だけです。

求めるもの数式意味
案件の合計工数=SUMIFS(記録!$D:$D, 記録!$B:$B, $A2)A2の案件に使った全時間
工程別の工数=SUMIFS(記録!$D:$D, 記録!$B:$B, $A2, 記録!$C:$C, C$1)1行目に工程名を並べて横に引く
見積工数との差=B2-見積工数プラスなら超過
超過率=B2/見積工数-10.2 を超えたら赤くする

超過率の列に条件付き書式をかけます。書式ルールは「数値が次より大きい: 0.2」で背景赤。これで、見積を二割以上超えた案件が進行中に分かります。条件付き書式だけで工程表を作る方法はスプレッドシートでガントチャートを作るに書いています。

請求可能時間の比率を出す

月の稼働のうち、どれだけが案件に紐づいていたかを出します。単価を決めるときに必要になる数字です。

求めるもの数式
月の総稼働時間=SUMIFS(記録!$D:$D, 記録!$A:$A, ">="&月初, 記録!$A:$A, "<="&月末)
請求可能時間上の条件に 記録!$E:$E, "請求可能" を追加
請求可能比率=請求可能時間/総稼働時間

この比率が低い月は、案件がなかった月ではなく、営業や事務に時間を取られた月です。両方を分けて見られると、「忙しいのに残らない」の中身が分かります。稼働の平準化の考え方は受託の稼働管理のやり方にまとめています。

実効時間単価を出して見積もりに戻す

最後に、案件ごとの実効時間単価を出します。計算式は次の1つです。

実効時間単価 =(受注金額 − 外注費)÷ その案件に使った自社の時間

例えば受注100万円・外注費40万円・自社稼働100時間なら、粗利60万円 ÷ 100時間 = 6,000円。同じ案件で自社稼働が150時間になれば 4,000円まで下がります。受注金額が同じでも、時間が増えれば単価は下がるというだけの話ですが、記録がないとこの下がり方が見えません。

出た数字は次の見積もりに戻します。同じ種類の案件で実績工数が見積を常に上回っているなら、直すべきは単価ではなく工数の見積もりのほうです(受託の見積もりの作り方)。粗利率の目安はWeb制作の粗利率の目安を参照してください。

この表で足りなくなるタイミング

スプレッドシートの工数管理は、1人〜数名であれば長く使えます。ちゃんと回っているのに乗り換える必要はありません。別の仕組みが必要になるのは、工数・発注・請求が別々のファイルに分かれ、同じ案件名を何度も入力し始めたときです。

ここからは自社製品の紹介です。私たちが作っている Pipelia では、工程の進捗と外注先の割当をガントチャートで管理し、そのまま案件の粗利とつながります。

Pipeliaの工程ガントチャート画面。タスクごとの期間と外注先の割当、進捗率が一覧で確認できる

よくある質問

工数は何分単位で記録すればいいですか?

15分単位(0.25刻み)で十分です。分単位で記録しても、月で集計すると判断は変わりません。むしろ細かくするほど記録自体が負担になり、数ヶ月で止まります。精度よりも、線を毎日引き続けられることのほうがこの表では重要です。

営業や見積もりの時間も記録するべきですか?

記録してください。区分列を「間接」にして同じシートに入れます。この時間を除外してしまうと、月の稼働のうちどれだけを請求できているのかが分からなくなり、単価を決めるときの分母を見誤ります。間接業務の比率こそ、必要な時間単価を左右する数字です。

チームで使う場合はどうしますか?

記録シートにG列として「担当者」を足し、SUMIFS の条件に加えるだけです。ただし、1つのファイルを複数人で同時に編集すると行の取り合いが起きるため、人数が増えたら入力をフォーム経由にするか、担当者ごとにシートを分けて集計側で結合する形にしてください。